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通販/ダイレクト

お客さまとの信頼関係を構築するために ~ツールの押さえどころ~

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.9〉

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通販事業における「ツール」とは

前回の「フルフィルメント」と同様に、普段は聞きなれない「通販ツール」という言葉。「ツール」を直訳すると「道具」や「手段」ですが、ネットやデジタルの領域では「簡単なアプリケーション」や「小規模プログラム」という意味があります。通販事業では、この「ツール」という言葉を比較的よく使用します。この場合、事業を展開し成長させていくうえでさまざまな目的を設定し、それを達成するための手段というような解釈がわかりやすいかもしれません。たとえば、「新規顧客獲得ツール」は新規顧客獲得を行うための広告等、「引上げツール」は広告で獲得した見込み顧客を顧客に引き上げるための同梱物やDM等がそれにあたります。また、オフラインの販促では同梱物やDMといった印刷物、オンラインの販促ではランディングページや入力フォーム、それらを運用・効率化するアプリケーションなどがツールに該当します。今回の記事では、とくにオフラインの販促に絞って説明します。通販ツールは事業を展開していくための道具、つまり手段・戦術ですので、まずはそれを使う目的から考えた方が効果的です。手段であるツール制作から着手すると目的が不明確になり、きちんとした効果測定ができなくなる、いわゆる「手段の目的化」に陥りやすいので注意が必要です。通販事業での販促的な目的は、「新規顧客獲得」と「リピート促進」の大きく2つに分けて考えるのが一般的です。通販事業者は、事業を展開していくに際にさまざまな課題を設定し、その改善と解決に取り組んでいます。よくみられる課題項目には、前述の2つ以外に「商品開発」「人材確保」「物流の効率化」等がありますが、「新規顧客獲得」と「リピート促進」が通販事業者が捉える重要課題の1位・2位になることが多いようです。この二大重要課題に対応するツールについて、次に詳しく説明していきましょう。

新規顧客獲得ツール

言葉の通り、新規顧客獲得を行うための手段・ツールのことです。リピート系通販での扱いが多い商材である健康食品や化粧品では、新規顧客獲得が年々難しくなっていく傾向(CPOの悪化)にあるため、最初から商品を定価で販売するのではなく、お試し商品を配布したり、初回に限り商品の価格を下げることによってまずは見込み顧客を獲得し、その後に定価販売あるいは定期制度加入につなげる「引上げ」を行う、2ステップでの販促が一般的となってきています。目的は新規顧客の獲得ですので、この2ステップでの販促手段・ツールは、広告で見込み客を獲得するための「広告ツール(クリエ―ティブ)」、商品発送時に同梱して引上げやリピートにつなげるための「同梱ツール」、テレマーケティングでの引上げや見込み客からの注文を促すための「引上げツール(DM)」等で構成されます。そして、それぞれのツールにはどのような情報が必要でどのような構成にするかを考え、かけた費用に対する目標値を設定して効果測定と検証・改善を繰り返すことで、さらなる新規顧客獲得の効率化を進めていきます。

リピート促進ツール

新規顧客獲得後のリピート、つまり繰り返し購入していただくための販促手段・ツールのことです。「新規顧客」に対して、一度獲得した顧客は「既存顧客」や「既存会員」というように区分しますが、新規で獲得した顧客に比べ、既存顧客には購入商品や回数・金額・購入時期等の多くの情報が蓄積されているので、きめ細かなアプローチをすることが可能になります。反面、きちんとしたセグメント(顧客属性に基づいた顧客の区分)と、それに対する目的と目標値の設定が重要となります。リピートは購入回数と購入金額(/回)、そしてそれらを掛け合わせた年間購入金額(/人)で捉えることができ、それらの数値を向上させていくことが目的となります。
顧客のセグメントは一般的なRFM(R=最終購入日、F=累積購入回数M=累積購入金額)でのセグメントだけではなく、購入商品や目的といった定性的な側面も加味する必要があり、その状態に応じた目的と目標を設定し、ツールを準備しなければなりません。たとえば食品通販の場合、商材によっては旬の時期が異なりますし、贈答目的であれば中元・歳暮時期や記念日などのタイミングが重要になります。このように、新規顧客獲得と比べると格段に難易度が高くなるのがリピート促進です。

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ルール違反は厳禁! 商品訴求と法令順守のバランスを

ツールでの表現だけに限りませんが、お客さまに対して販促やコミュニケーションを行うにあたり、最近とくに注意が必要なのは法令順守です。もちろん法令の順守は当然のことであり、以前から重要ではありましたが、とくに健康食品や化粧品・食品の通販では、ユーザー保護の観点からよりいっそう厳密になってきているのが現状です。一部のモラルの低い事業者の逸脱した広告表現や健康被害、食品の産地偽装等といった社会問題等も、ユーザーの意識の高まりの背景にあると言えます。お客さまと直接やり取りを行う通販事業では、流通や店舗を間に挟まないので企業からダイレクトに情報発信できるというメリットがありますが、その一方で法令に則っていない情報やユーザー不利益に繋がるような表現も増加しかねないため、法令やガイドラインの整備はもちろん、事業者が理解度を高め、ユーザー目線で情報発信をするといった実践レベルの向上が重要と言えます。ここでは、ツールでの商品訴求・表現という切り口からいくつかをピックアップして、注意点を説明したいと思います。

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【食品】

食品の商品説明・訴求は、とくに産地や原材料に関することが最近問題化する傾向にあります。そのため、食の安全性に対するユーザーの関心が高まってきており、その裏づけのひとつとなる原産国・原産地情報には最大限の注意を払わなければなりません。食品はJAS法の品質表示基準に基づいた表現・表示をしなければなりませんが、原材料調達や製造を外注している場合、外注先からの提供情報が実態と異なっていたために表示違反になるというような事例もあります。つまり、提供された情報をうのみにするのではなく、その情報が正しいかどうかを精査・確認することも販売者の義務となっているのです。

【化粧品】

化粧品は、主に薬機法に訴求できる効果効能が定められていますので、基本的には商品の原材料と製法に応じた許されている範囲内の表現でツール制作をすることになります。化粧品は通販市場の成長以前から成熟した市場を形成していたので、既にルールが定められており、きちんと勉強をして情報を理解していればツールでの表現がしやすい・わかりやすい商材と言えます。

【健康食品】

食品や化粧品は、通販市場が大きく成長する前から大規模な市場を形成していましたが、健康食品は通販市場の成長に大きく影響を受けた商材と言っても過言ではありません。健康食品の機能性については、薬機法や健康増進法といった法律に加え、「特定保健用食品(トクホ)」や「栄養機能食品」「機能性表示食品」といった新しい規格基準や制度が整備されつつある状況ですので、常に情報収集し、現状に合わせた表現を考えていかなければなりません。

【景表法について】

扱う商材ごとに法令やガイドラインがあることは前述した通りですが、商材に限定されない景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示法)、いわゆる「景表法」のような法令も存在します。景表法とは、主に「優良誤認表示の禁止」「有利誤認表示の禁止」「その他の誤認されるおそれのある表示の禁止」で構成されている、「うそや大げさな表現からユーザーを守る法律」です。景表法での違反事例は、最近多く目にするようになりました。たとえば、期間限定で定価より大きく値引きされている広告を見ると購入衝動が刺激されますが、その値引きが実際には期間限定ではなく定常的に実施されているとすれば、これは期間限定の実態がないので有利誤認として判断されます。ツール制作の際には、うっかり法に触れないように、景表法の内容を確認・理解しておく必要があるでしょう。

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まとめ

お客さまに情報を発信するツールは、商品の販売目的のみではなく、お客さまからの信頼も左右する重要な役割を持っています。新規顧客を獲得する媒体広告では、ユーザーのマスメディア離れや多くの企業の通販参入による過当競争の激化等で、CPRやCPO(媒体費用/獲得顧客で算出する、新規顧客の獲得単価)が悪化傾向にあります。そのため、あの手この手で少しでもレスポンスを向上しようとする意識が強くなるのはわからなくもありませんが、ルール違反はせっかく商品を手にとってくれたお客さまとの信頼関係を壊してしまいます。お客さまと接するさまざまな場面で、ルールを守りながら自社商品の特徴を訴求することが今後はより重要になってくるでしょう。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

コミュニケーションプランニングセンター

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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