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そのまま進めるのはNG! 黒字化達成をきっかけに、改めて今後の事業戦略を検討し直そう ~検討すべき4ポイントはこれだ:前編

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.28〉

通販事業における「黒字化」の功罪

「黒字化」は、通販事業を立ち上げた多くの事業社の最初の目標であり、黒字状態という経営的な部分だけでなく、以降の通販事業の成長という意味でも重要なポイントと言えます。それについてはこれまで数回かけて説明をしてきましたが、なぜそこまで「黒字化」というタイミングを重視する必要があるのでしょうか。黒字化とは収入が支出を上回り、余剰がマイナスからプラス(利益)に転じた状態のことで、新規で事業を立ち上げた企業の経営層からすると、やっとひと安心できるようになったという感じではないでしょうか。

しかし、現場で業務を行うスタッフは黒字化を達成したからといって、自然と新しい課題や方向性が見えるわけではありません。逆に、事業の成長を経営層から強く期待されるようになると、それまでの惰性で事業を進めてしまうケースがあるように見受けられます。それは、現場状態を把握できていない経営層からのトップダウンが増えることに加え、現場スタッフが慢心しやすい時期であることが重なることで、事業の戦略を検討することを見落として進めるようになってしまうことが、要因のひとつだと思います。

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黒字化達成のタイミングで、とくに戦略検討すべきことは?

通販事業はよくも悪くも俗人的、言い換えると「個人の考える力」が事業の成否や成長に大きく影響します。その反面、数値計測による日常業務の繰り返しはルーチン的に捉えられ、一番重要である「考えて試行し続ける」ことが薄れていく傾向になりがちです。そのような意味でも、黒字化を達成したタイミングは、改めて今後の戦略を検討するにはよいきっかけとも言えるでしょう。事業戦略を検討するにあたってのポイントはさまざまで、展開するマーケットや商品種類、特長等により一概には言いにくいのですが、その中でも比較的共通しやすい「1)人材育成・組織構成」「2)商品戦略」「3)ブランディング」「4)内製化・他事業展開」の4点をピックアップし、今回と次回に分けて詳しく説明していきたいと思います。

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1)人材育成・組織構成

書籍やセミナー等ではKPIを活用したシステマチックな事業構造しかほとんど語られませんが、通販事業には俗人的な側面が存在していると感じます。とくに、独自性や付加価値の高いオリジナル商品を展開する場合は、この傾向はより強くみられます。新規で通販事業を立ち上げるケースでは、運営スタッフは比較的少人数で構成されることが多く、企業によっては他業務と兼任になることも珍しくありません。

そのような中、スタッフは自然と通販事業に必要なさまざまな業務を行わざるを得ません。通販事業はKPIに基づいて運用しますので、それぞれのKPIに対して業務を区分することができます。これは業務を効率的に進めやすいように感じられるでしょう。たとえば、CPOは新規顧客獲得に関するKPIですが、主たる業務は媒体出稿業務となります。具体的には、クリエーティブを制作し、出稿媒体を選定し、出稿枠の調整を行い、結果を検証して次の出稿プランをつくる、といった具合です。

対して、LTV:リピートは定期購入制度の運用とキャンペーン等で、主となる業務は対象者をセグメントし、キャンペーンDMや同梱物を制作し、キャンペーン対応等の調整…等ではないでしょうか。実際に経験しなければわかりにくいかもしれませんが、この2つは業務内容や人材の適正、必要なスキル等がまったく異なります。そのようなことから、社内販促(LTV)と新規顧客獲得(CPO)は別チームにして担当者を分けるケースが見受けられます。

これは事実、効率化と専門的なスキルの蓄積という意味では最適解ではあるのですが、通販事業の根底である「顧客管理」とは、購入単位ではなく顧客の連続する購入に対する視点、つまり新規顧客獲得もその後のリピートも連結して捉えることが重要なので、スタッフや業務を分化することによって顧客全体の動向や関連性が薄くなるというデメリットも存在します。大雑把に説明しましたが、事業の構造を捉えて短期的に見たほうが効率的な部分と、事業を成長させていくのに必要な人材育成という中長期での観点で考える必要があるのです。

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2)商品戦略

商品戦略は事業の成長を左右し、売上に直結する非常に重要なポイントです。前述した「人材・組織」は事業を展開する土台と言えますが、この商品戦略はプロモーション・売上に直結する要因だからです。また、単にアイテム数と売上の増減関係というだけでなく、次回ご説明する「ブランディング」等にも大きな影響を与えるので、重要度は非常に高いと言えます。

この商品戦略の検討を疎かにして、せっかくの企業や商品の独自性を損ない、本来競合に対しての優位性を強めていくべき付加価値をなくす企業も少なくありません。商品戦略・開発を短期的に売上を上げるためのいわゆるアイテム数重視施策に偏らせると、そのような傾向になるように感じられます。もちろん、アイテム数を増やすことはプロモーションの多様化や売上アップに寄与するのですが、背景にある商品や企業のブランディングも併せてしっかりと考えておきたいところです。また、開発する商品の「①役割」・「②販売対象」・「③対象の規模」等は十分検討しておいたほうがよいでしょう。以下、順を追って説明していきます。

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①役割

健康食品や化粧品等を主アイテムとして展開する事業社には、この商品の役割検討はとくに重要となります。商品の役割に関してはいろいろな観点で細分化できますが、一番重要なポイントは「新規顧客獲得」に活用できるか、「リピート」のみで活用するのか、と考えるとわかりやすいかもしれません。

これまで説明してきた通り、いまの通販市場における通販事業の展開は、新規顧客獲得販促で一時的にマイナス=赤字化することは多くのケースで避けられないのが現実と捉えざるを得ません。メディア環境の変化に伴い、媒体ごとのCPOも変化しているように感じています。そのような中で、効率的=少しでも負担を少なくし、そして競合商品に対して効果的=優位的に「新しい顧客」を獲得できるかどうかというのは、利益の増減に直結する重要なポイントになるのではないでしょうか。新規顧客獲得のための商品を、「入口商品」と呼称する企業もあります。事業社の戦略やリソースにより一概には言えないものの、安易に入口商品を追加して入口を拡張するのはリスクが高いので注意が必要です。ある程度利益を生み出せる状態になり、展開している商品の市場占有率や競合商品に対する優位性等を把握して、頭打ちや鈍化するタイミングを踏まえてから検討するのが議論のスタートとしてわかりやすいでしょう。

またリピート商品は、顧客数、活性客数、定期顧客数等が判断材料になります。どれくらいの効果が期待できるかという目標設定と、その目標の達成可能性を計るためのテストマーケティングも含めたプランの設計は最低限必要ではないでしょうか。

今回は、戦略検討すべき4つのうちの2つめ「商品戦略」の途中まで説明しました。次回は、「2)商品戦略」の後半と「3)ブランディング」「4)内製化・他事業展開」についてご説明いたします。

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PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

ダイレクトビジネス推進室

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■上級WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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