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そのまま進めるのはNG! 黒字化達成をきっかけに、改めて今後の事業戦略を検討し直そう ~検討すべき4ポイントはこれだ:後編

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.29〉

続・黒字化のタイミングで検討すべきポイントとは

ここ数回、黒字化のタイミングで注意すべき点を説明してきました。前回は、最低限これだけは検討してほしい「1)人材育成・組織構成」「2)商品戦略」「3)ブランディング」「4)内製化・他事業展開」をピックアップして、「2)商品戦略」の途中まで説明してきました。今回はその続きから進めてきたいと思います。

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2)商品戦略

売り上げに直結するだけでなく、後述するブランディング等にも影響する非常に重要な検討項目です。「①役割」「②販売対象」「③対象の規模」に分けて、前回は「①役割」まで説明しましたので、今回は「②販売対象」から説明していきます。

②販売対象

販売対象とは、その商品を訴求するターゲットのことです。既存顧客に対する販促では、性別や年齢、購入商品、R(最新購入日/最終購入日)/F(購入頻度/累積利用回数)/ M(購入金額/累積利用金額)などのさまざまな属性で区分し対象をセグメントしますが、商品戦略を考える場合も、同様の検討を最初にしておく必要があります。

一昔前は、「通販に適している商材は何か」という観点がありましたが、今ではインフラやシステムの充実により、逆に通販で扱えない商品のほうが少ないというような状況になりました。その中でも、リピート性を土台にした通販の商材として、健康食品、化粧品、食品は代表商材として扱われており、一般的に「食品>化粧品>健康食品」の順で多アイテム展開しやすいようです。

ここでの「販売対象」は、新規顧客を除いた顧客を想定しています。化粧品は機能・目的別にアイテムが存在するので、多商材展開しやすく感じますが、不足アイテムの穴埋め的に新商品開発をするのは失敗につながりやすく、前回の記事の「①役割」でも少し触れましたが、顧客数がある程度増え、かつ活性率も伴っていなければ、アイテム数を増やすのは注意が必要になります。新規顧客獲得に媒体等で露出する入口商品は、通販事業社の顔と言ってもいいくらい重要な商品です。まずは「顔」である商品を深掘りし、興味を持ってくれたお客さまに対してしっかりとした情報提供を通じて購入意欲を高めながら、同時に関係性をつくっていくことが自社の顧客化という点では重要なのです。

しかし、獲得した見込み客の状態から商品購入して顧客化するのは少数というのが現実なので、未購入者に対して別商品をアプローチしたくなる気持ちもわかります。実際の現場を見ると、せっかく媒体費を投じて商品露出したのに、商品の情報訴求が不足したままで安易に別商品への期待に移行するケースは少なくありません。商品ラインナップの充実という考え方も大切ですが、どのような顧客にどのように訴求できるかという、「顧客が欲していること>アイテム充実」目線での検討をすれば、比較的わかりやすく整理できると思います。

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③対象の規模

商品戦略における「対象の規模」とは、言葉通り、商品を販売するターゲットの規模・人数を指しています。わかりやすいポイントですが、通販事業がKPIをベースにしてシステマチックに機能化されている注意点としてとらえてもらうとよいかもしれません。簡単に言うと、前述の役割とターゲットの検討に「規模」を重ねるというイメージです。

規模とは多くの場合「人数・金額」になりますが、対既存顧客販促でもKPIである受注率やROI等の検討に重点を置きすぎて、そこから得られる売上や利益の額がおろそかかになりがちなのです。たとえば、訴求商品と対象属性との相性(反応率:受注率)がよいデータがあったとします。「A商品を購入してRが3か月内の対象では、受注率が10%」というようなイメージです。しかし、その属性ターゲット数が少ないというケースがこの事例となります。

通販事業でよく活用するKPIは、CPOや受注率、ROI等で、これらをきちんと理解していれば実業務を運用しやすい「ツール」なのは間違いないのですが、これらのほとんどは規模=効果よりも効率面での評価指標となっているのです。極端な例ですが、1000人で10%の受注率よりも100,000人で5%の受注率のほうが事業的にはよい場合があるのです。通販現場では効率面を重要視しすぎにより見落とされる「現場あるある」なので、検討のときには意識するようにしたほうがよいでしょう。

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3)ブランディング

ブランディングに含まれる領域は非常に広く、少ない文章で説明することは難しいのですが、一言で言うと「ブランドを形作るさまざまな活動」と言えるでしょうか。今回は「企業を認知してもらう」ということを中心において、「対象」「認知の内容」「関係性(認知してもらった内容から形成されるユーザーとの関係性)」の3点で解説します。

通販の場合、情報発信は新規顧客獲得販促と顧客販促の2つに分けることができるので、対象もまずはこの区分で考えてみると特長がわかりやすいと思います。具体的な手法によって異なるので一概には言えませんが、前者はマス媒体を活用するケースが多く、対象規模:大でイメージ訴求傾向、後者はDMやテレマーケティング、同梱ツール等を活用し、対象規模:小から中で詳細訴求が向いている傾向があると思います。

通販事業社の現場では、「ブランディング」と「販促」は分けて考えられることが多く、ブランディングにコストをかけるのは、これまでの流通を主としたメーカー系企業と比べると比較的少ないように感じます。それは、KPIによって費用対効果を細かく計測し、その結果によって販促費用を調整するという通販事業の構造に起因するのかもしれません。つまり、短期的な効果=売上が見えにくいブランディングには投資を控える傾向になりやすい、ということです。

しかし通販事業においては、自社顧客を蓄積・管理することがビジネス構造の土台ですので、顧客(あるいは将来的な顧客=見込み客)から見た企業像をターゲットの中につくることは、短期的な売り上げよりも重要度が高いケースもあるのです。対象を選定し、どのような企業として認識してもらいたいかという内容を整理し、その結果、顧客からどのようなイメージを持たれているか、と一連で考えておかなければなりません。

たとえば、専門店として食品を販売していた企業が突然、雑貨を販売し始めるとどうでしょう。多くの方にとっては、それまでの「食品の専門企業」ととらえていた企業イメージが変わります。しかし、たとえば元々の食品がある素材を活用したものであった場合、その新しい雑貨が、本来食品として販売している素材を加工したものだったとすればどうでしょう。さらにそのうえで、顧客に対して素材の研究開発の情報発信を継続的にしていけば、もしかすると企業イメージは向上するのではないでしょうか。

事業が成長するに伴い、さまざまな展開が検討されるでしょう。それらのすべてが企業のブランディングに関係し、顧客の中にイメージが形づくられ、それによって他社優位性がつくられていきます。ブランディング=どのような企業(とそのイメージ)を創っていくかというのは、専門性や付加価値が高い企業にとっては事業成長と長期的な存続につながる重要なポイントなので、節目ごとにしっかりとした検証と検討をしていきましょう。

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4)内製化・他事業展開

具体的な検討内容により注意点は異なりますが、単なる機能性や経営的な側面のみでなく、前項のブランディング=企業像もきちんと考えておくことをおすすめします。企業が外部の専門家に委託していた業務を、自社内で行う「内製化」は、顧客からはあまり見えない部分ですが、発信することで企業価値や他社優位性を向上させることもできます。

他事業展開は商品戦略と重複する部分もありますが、事前の情報発信の有無や内容によって大きなプラスにすることもできる一方で、下手をするとそれまで築いてきた他社優位性や付加価値を失ってしまう可能性も秘めていますので、より慎重に検討しましょう。


事業課題は常に発生しますが、それらの検討はどうしても近視眼的になりがちです。事業社としては、さらなる成長を期待した展開を始めるであろう黒字化というタイミング。このような節目の時にこそ、しっかりと時間をかけて戦略的な方向性を形にしておくのが望ましいと思います。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

ダイレクトビジネス推進室

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■上級WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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