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通販/ダイレクト

まず始めは、2つの重要データの把握から ~通販事業スタート時の数値計測~

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.12〉

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通販事業スタートで大切なのは「考えるスキル」

多くの準備が整って通販事業をスタートすると、たくさんの業務を同時進行することになります。新規顧客獲得では、出稿媒体選定、クリエイティブ制作、受注体制の調整……。顧客リピートでは、同梱物の制作、キャンペーンの企画・クリエイティブ制作、テレマーケティングの設計、印刷物の発注と進行管理……。これらに加えて、商品の発注や在庫管理、スタッフの教育等、やることが山積み状態です。

通販事業は、システマチックな側面が特徴的に見えるので、KPIを理解して、外部の協力会社からのサポートを受けながら、通販システムを回していけば順調に進むと勘違いする方も多いのですが、これまで何度もご説明してきたように、適した人材と、実務の積み重ねによる経験値が必要な、案外属人的な側面が強いというのが実態なのです。

とくに、類似商品を扱う他社と比べて、差別化ポイントや独自性が明確で、価格勝負ではないビジネスモデルでは、その傾向がより強いといえます。システマチックな仕組みで事業展開をすることで、効率化はできるのですが、社内スタッフの業務が作業化・ルーチン化しやすいため、その中で、しっかりと重要なデータを把握すると共に、データが示す実態を推察して、適宜仮説を組み立てていくという、「考えるスキル」を蓄積していくことが大切になります。

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どのようなデータを把握すればよいのか?

通販事業の販促的な業務と言えば、「新規顧客獲得:アクイジション」と「顧客リピート:リテンション」が両輪ですが、その両方の状態を把握するための基礎数値計測とも言えるデータ分析は、事業成長の根幹を握るといっても過言ではありません。
成功、あるいは失敗したプロモーションの結果を、きちんと計測して評価をしなければ、リピート系通販事業の成功はあり得ないからです。

数値計測は分析する観点によって多様ですが、通販事業では、その両輪の新規顧客獲得とリピート、つまりCPOとLTVの2つを見ることが最重要です。もちろん、顧客属性毎の購入傾向や、媒体・企画内容による新規顧客獲得効果等など、分析視点はさまざまあるのですが、とくにアイテム数が少なく独自性の高い商品展開をする通販事業では、事業開始から当面は、CPOとLTVをしっかりと見ておけば、大きな失敗をすることは少ないと思います。

逆に、把握したデータの量が少ない状況で、色々な視点や切り口で分析してみても、あまり有効ではないことが多いのです。事業を立上げて1、2年で顧客数も数千人という状況に対して、外部の協力会社から、顧客分析の提案を受けて実施してしまうケースをたまに目にしますが、かかるコストや手間と比較しても、あまり役に立っていないように感じます。
ですから、「新規顧客獲得:CPO」「リピート:LTV」の2つを確実に把握し、それに見合った対策を立てて行くことに注力したほうがよいと思います。

また、事業の立ち上げ時に、大規模な通販システムを導入する企業は少なく、最近はよいパッケージソフトやASP(Application Service Provider:ネットワークを通じて提供されるソフトウェア)があるので、それらを選択する企業は多いと思います。これらは、一昔前に比べると随分使いやすくなってきていますが、汎用的であるがゆえに、かゆい所に手が届かないと感じる場面は少なくありません。
数値計測面に関しても、具体的にどんな場面で不足を感じるのか、その場合に、どう対処すべきか等、次の「新規顧客獲得:CPO」「リピート:LTV」ごとの説明の中で詳しく解説していきましょう。

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[1]新規顧客獲得:CPO

CPO(Cost Per Order)は、新規顧客1人を獲得するのにかかるコスト(新規顧客獲得費用/新規顧客獲得人数)で、事業立ち上げから注視していく最重要KPIのひとつです。この数値計測は、比較的安価なソフトにも標準で備わっているので、CPOの実測データを把握することは難しくないと思います。

「新規顧客の獲得」は、通販企業の多くが重要課題のトップに位置づけていることからわかると思いますが、苦戦している企業も多いのが実情といえます。通販市場の拡大に伴い、多くの企業が参入してきているという背景から、媒体を活用した新規顧客獲得販促は、かなり以前から全体傾向として悪化してきているのです。
20年以上前、マス媒体で通販広告を見ることが稀だった時代では、新規顧客獲得の時点で利益が出ることもありました。現在は、商材や販売価格、訴求ポイント等によってCPOは大きく異なりますが、初回で利益を出すのは、ほぼありえない状況です。どこの企業も、いかに赤字を少なくしながら、事業成長に必要な顧客を増やしていくかに苦慮しているのです。

そのような状況なので、商品を定価で販売する広告を出稿してもレスポンスは少なく、オファー、つまり購入喚起するための仕掛けが、必要となってきているのです。独自性が高いオリジナル商品を展開する企業は、このオファーをあまり好まず、できれば商品のよさや企業の考え方等を訴求ポイントとして、販売に結びつけたいと考えますが、ネットとテレビ以外のマス媒体では、そもそも多くの情報を伝えること自体が難しいので、仕方なく訴求力の強いオファーを使わざるを得ないという、理想と現実に苦悩しているのです。

こういった状況において、さまざまな考え方があると思いますが、リピート系通販は、お客さまとの長いおつき合いを前提にした(目指した)ビジネスモデルなので、新規顧客獲得時には、ある程度全体の流れを踏まえながら、まずは、お客さまとのご縁をつくることを主目的とし、より深い情報発信やコミュニケーションによる関係性の強化は、リピート促進などのCRM(Customer Relationship Management)を通じて、しっかりと積み重ねていくしかないのではないでしょうか。
新規顧客獲得時のお客さまとのコンタクトは、一期一会ではあるものの、最初に会ったときに自分のすべてを伝えて理解を得るというのは、いまの時代には難しいのではないかとも思うのです。

このように、オファーによって購入のハードルを下げて獲得した顧客は、正規顧客ではなく見込み客として顧客分類し、そこから正規顧客への『引上げ率』を加えることでCPOを算出します。引き上げ率を加味したCPOを算出せず、LTVの起算をCPR(Cost Per Response)から積み上げていくことで評価するのも可能ですが、顧客を分類しておくことで、より細かな評価と対策を立てることができるようになります。

また、見込み客獲得から正規顧客あるいは定期顧客への引上げが伴う手法だと、CPOを算出する時の費用の積み上げが、汎用的な通販ソフトでは対応できないこともあり、別途データを加工して、集計しなければならないので注意が必要です。

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[2]顧客リピート:LTV

そして、もうひとつの重要指標であるLTV(Life Time Value)。直訳すると「生涯価値」ですが、通販では月や年単位等、一定期間での金額のリピート(回転率)として計算するのが一般的です。たとえば、1月に10,000円を購入した新規顧客が、12月まで(1年間)に累積100,000円の商品の購入をすると、1000%/年となります。

CPOの集計に比べ、このLTVはシステムに備わっている定型集計では不十分だと感じることが多々あります。LTVは、媒体別や企画(クリエイティブやオファー)別でみることも必要ですし、月単位のデータ量が少ない場合は、複数月分をまとめて計算しなければデータとしての信頼性が低くなります。
また、一定期間後の累計データだけでなく、毎月の回転率の推移をみることで、顧客の購入動向や、商品のサイクルを捉えることができる等、通販事業社によって異なる状況を捉えるには、工夫が必要となるからです。

このLTVは、当然ですが、事業開始段階では実数値ではなく、想定値・目標値なので、実際に事業を進めていく過程で随時実数を集計して、計画時の目標値との乖離を評価しなければなりません。

もしCPOが目標値に達していても、LTVが下回っていると、事業が大きく悪化するリスクがあるのです。そして、このLTVのブレは、売り上げはもちろん利益に対しても非常に大きなインパクトがあります。実測した数値をもとにして、事業の見通しをきめ細かに修正しながら、その都度対策を立てていくようにしなければ、事業年度末にとんでもない結果を迎えることになるので注意が必要です。

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ポイントは、「あえて自分でデータ集計をする」こと

CPOやLTV等のデータは、安価な通販システムでも簡易的に出力されますが、あえて自分のパソコンのエクセル等の表計算ソフトで、集計・分析することを強くおすすめします。単純なKPIではありますが、事業推進において非常に重要な数値なので、きめ細かくさまざまな角度で集計・分析し、活用することが大切だからです。

そして、顧客データを直接管理する通販事業では、当然データを理解することは非常に重要であり、推進スタッフにとって、確実に必要なスキルでもあります。蓄積されるデータの項目や内容等を理解することは、事業規模が大きくなり、よりきめ細かな対応ができるシステムにヴァージョンアップする際に役立ちますし、逆に理解ができていないと、現場での運用や事業の推進等、先々で苦労することになります。

システムに限らず、外部の経験のある協力会社と綿密な連携をとって、専門性の高い部分は協力会社に任せるのはよいのですが、実作業は任せながらも、ポイントとなる部分の目利きは自社スタッフができるようになっておかなければなりません。
通信販売事業には、テレマーケティング、マスマーケティング、CRMマーケティング、WEBマーケティング等のいくつかのマーケティング機能がありますが、データを集積・分析することで現状把握し、プロモーションの検証と仮説を繰り返しながら、事業を成長させていくデータベースマーケティングは、事業の基盤なのです。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

コミュニケーションプランニングセンター ビジネス開発部 

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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