
前回の記事で、将棋の面白さや将棋界の厳しさが伝わりましたでしょうか?
まだ読んでいらっしゃらない方は、こちらの記事も読んでみてくださいね!
とはいえ前回の記事は、少し読み応えがありすぎたかもしれません。
もっと手っ取り早く、将棋の魅力を伝えたいです。何か良い方法はないでしょうか。
そういえば、うちは広告会社でした。
今回の記事では、将棋のCMを作ってみたいと思います。
将棋を指す人が増えるようなCMを、全国に放送できると仮定して、企画してみます!
よーし。

毎日のように目にするCMですが、いざ自分で作るとなると、どう考えれば良いのやら。
というわけで、プランニングビジネス部にいらっしゃるY田先輩にお願いして、CM企画のいろはを教えていただくことになりました。なんと贅沢なことでしょう。
Y田先輩は、2002年に実績あるコピーライター集団のTCCに入会されており、広告賞受賞歴も多数あります。現在は出身地の広島で、企業はもちろん、テレビ局や新聞社などの媒体社やプロスポーツ球団のコミュニケーション設計も数多く担当されています。まさに社内のエースクリエーターです。

- 西上:
- 「師匠、よろしくお願いします。楽しみながら、学ばせていただきます!」

- 師匠(Y田先輩):
- 「よーし、0から1を生み出す難しさ、面白さを感じてもらおう!」
何を、どう言うのか
- 西上:
- 「早速ですが、CM作りは何から始めれば良いのでしょうか?」
- 師匠:
- 「とりあえず、『何を言うか』を決めることからやな。ターゲットに伝えたい、メインメッセージを。」
- 西上:
- 「なるほど、でも、将棋は魅力がいっぱいありすぎて困ります。全部紹介したいです。」
- 師匠:
- 「CMって15秒か30秒がほとんどやんか。その中にあれもこれもと詰め込んだら、結局何が言いたいのか分からない、印象に残らないCMになっちゃうよな。What to say『何を言うか』を最初に決めた上で、How to say『どう言うか』を考えていくのが大事やね。」
- 西上:
- 「なるほど、二兎を追う者はなんとやら、ですね。」
「発見」と「ずらし」で印象に残す
- 西上:
- 「せっかく作るなら、面白いものを作りたいです。CMに限らず、広告ってほとんど印象に残ってないんですよね。覚えていないので、もちろん例は挙げられないのですが。」
- 師匠:
- 「西上にとって、『面白い』って何かな?」
- 西上:
- 「漫画とか漫才とか、ですかね。でも、笑いを伴わない面白さもありますよね。人の裏側に密着するドキュメンタリー番組とか、ちょっとした雑学とか。「○○あるある」みたいなのも面白いと思います。感動すると言えば大げさですけど、でも確かに心を動かされた気になる、そんな面白さです。」
- 師匠:
- 「おお、良いじゃん。それって、今までにない視点が得られたり、言われてみるとなるほど確かにって共感したりすることじゃない?『発見』があると、印象に残るよね。」
- 西上:
- 「なるほど、発見ですか!確かにInterestingの面白さは、発見とセットになっていることが多い気がします。相手の印象に残すには、発見を与えることが大事なのですね!」
- 師匠:
- 「あとは、ちょっと技術的なことだけど、『ずらし』をうまく入れると、一気に魅力的な作品になる。」
- 西上:
- 「ずらし、ですか?」
- 師匠:
- 「相手の予想を、見事裏切ってみせる。ちょっと難しいと思うけど。逆転させてみるとか、誇張するとか、方法はいくつもあると思うから、いろんな作品を見てまねしてみると良いよ。」
- 西上:
- 「なるほど、たくさんインプットしながら頑張ります。教えていただき、ありがとうございました!」
- 師匠:
- 「教えることはまだまだあるけど、実践しながらだね!」
将棋CMを作ってみる
さて、それではいよいよ、将棋CMを作っていこうと思います。
みんなが将棋を指してみたくなるような、良い作品を。
ほんとは、Y田師匠に作ってもらいたいところですけどね。
そうだ、こんな方法はどうでしょうか。
師匠とCM対決をするのです。
そうすれば、師匠にも将棋CMを作ってもらえる。これは名案かもしれません。
しかし、普通に勝負してはまるで勝ち目がありません。何しろ相手はスーパークリエーター。ここはハンディをいただきましょう。
- ハンディ①
師匠には、企画・コンテ制作まで30分以内でやっていただきます。
- ハンディ②
私は絵が描けないので、絵の上手い同期に描いてもらいます。総力戦です。
- ハンディ③
テーマは私の好きな将棋。師匠はルールもあやふやと仰っていました。
これなら良い勝負ができるかもしれません。
こんな図々しいお願いをしたところ、師匠は快く引き受けてくださいました。なんとお心の広いことでしょう。
オリエンをして、早速それぞれ作業開始です。
自分には3日もある。そうやって余裕を持って構えていると、あっという間に時間が過ぎていきます。
これは良い!と思いついたアイデアも、1日寝かせると急に駄作に思えてきます。学校の勉強と違って、どこにも答えが書いてありません。単純作業とは違い、いつ満足のいくアイデアにたどり着けるかを計算して正確に予測することができません。そもそも、今考えているターゲット、切り口で大丈夫なのかと不安になります。先の見えない暗いトンネルの中で、前だと思う方向に足を動かしている感覚です。身をもって、クリエーティブの難しさを感じました。
そんなこんなで、やっと、一応の形になりました。
それでは、作品発表に移ります!!
西上企画


制作意図
新しく将棋を始めてもらうことは、余暇を他のコンテンツから奪うことであると考えました。最近はスマホゲームなどで時間をつぶす人がかなり多いのですが、はやり廃りが激しく、せっかく一つのゲームを極めても、すぐにみんな飽きてしまう。新しいキャラクターが出てはアップデートを繰り返し、追い付くだけで精一杯。その点、将棋はルール変更がありません。将棋2.0なんていうアップデートもありません。ケガもしません。将棋は一度覚えたら、1000年後でも、きっと楽しめるゲームです。
師匠企画

制作意図
将棋を全く知らない人にも、興味を持ってもらえるような作品にしました。結果的に将棋を指す人が増えればよいのですから、CMを見た人自身が始めなくても、例えばお子さんに習わせるのでも良いわけです。将棋を通じて生まれるつながりの幅広さを起承転結に乗せて表現しています。「先生と教え子」は、先に述べた「ずらし」を活用していますね。常識の逆をいっています。盤を挟めば年齢も職業も関係ないです。
いかがでしょうか。
ちなみに西上は企画だけで3日かけましたが、師匠の作品は企画に10分、コンテ制作に20分の時間配分だったそうです。超短時間で恐ろしいクオリティーですね。
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振り返り
やはり、CM企画は大変でした。
自分の言いたいことだけを表現しても、誰も振り向いてくれません。想像力が大切です。
師匠は将棋に詳しくないそうですが、将棋愛好家の中でよく語られる将棋の魅力をまさに表現されており、その想像力に改めて恐れ入りました。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。いつか一緒に将棋を指しましょう!
西上のアドレス r.nishigami@dwj.dentsu.co.jp まで、お問合せください。いつでもアプリでお相手いたしますよ!