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ポイントは、潜在的な段階から学生と関係を構築するコンテンツ発信

~インバウンドリクルーティング入門<vol.3>~

さて、前回の<インバウンドリクルーティング入門vol.2>では、「インバウンドリクルーティング」というデジタルを活用した採用手法について紹介し、学生に一方的な情報を押しつけない「育成型」コミュニケーションが重要であるというお話をしました。
今回は、より具体的な事例をご紹介しながら、インバウンドリクルーティングについて説明していきます。

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大手製薬メーカー・A社の場合

実際に、インバウンドリクルーティングを使った新卒採用活動を導入している大手製薬メーカー・A社の事例を見てみましょう。
A社は、タレントを使ったテレビCMを中心に認知獲得をしています。既に認知率が国内において60%以上を占めており、国内で知らない人はいないと言っても過言ではありません。幅広い年代に社名認知が浸透しているため、「大手企業で優良企業」「安定性が高い」というポジティブなブランドイメージが形成されています。当然、多くの学生から求人メディアを通じてたくさんの応募があります。一見なんの問題もなさそうなA社が、なぜインバウンドリクルーティングを導入したのでしょうか?

従来の「安定」イメージを打破し、成果主義志向にマッチする学生を採用したい

A社には多くの大学生、大学院生からのエントリーがもともとあることは前述の通りです。それは、「会社の最も重要な資産は『人』だから」と人事担当の方は言います。会社の急速な成長に比例し、「大手企業」「安定」といったイメージが形成され、医療関係者等の取引先からの信頼感は高くなり、学生からは「長く落ち着いて働ける」「給料や福利厚生が安定している」等というイメージで人気を集めていました。

しかし、その一方でA社の社内では活発に議論が繰り返されており、実際には医療業界以外も含めて活動するなど、「チャレンジ魂を持った成果主義志向の社員たちの集まりである」という事実がうまく伝わってないという状況になってしまっていたのです。
A社がインバウンドリクルーティングを採用した理由。それは、「安定するつもりはない、チャレンジャーとして業界を盛り上げていきたい」という現在の状況や、枠にとらわれず活発に活動している結果主義の傾向にマッチする学生を採用したいからでした。

【参考】A社のインバウンドリクルーティングサイト「SCIENCE SHIFT(サイエンスシフト)」

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「SCIENCE SHIFT」は、これからの社会を動かしていく、学生や若者のためのラーニングサイト。自社の自慢話をせず、就活生に対するお役立ち情報を提供する。また、興味関心に応じてユーザー行動を分析して、あらかじめその学生が知りたい情報を把握し、マーケティングオートメーション機能を使ってOne to Oneでの情報を提供している。

インバウンドリクルーティングなら、『「A社」と検索しない学生』を採用できる!

インバウンドリクルーティングのいいところは何でしょうか? それは、検索ユーザーの情報探索行動に沿ったコンテンツ提供をすることからスタートし、関係性を深めて「育成」しながら、最終的にはリクナビ等の求人メディアへ応募してもらう無理のないマーケティングファネルをつくれることにあります。
これから就活に挑もうとする、とくにまだ潜在段階の学生の検索行動を考えれば、現時点でよくやっている「自社の魅力を伝えようとする」進め方自体が、学生が情報を受け入れる準備体制に入ってない状態に対して「一方的に押しつけてしまっている」ことに気づくはずです。
インバウンドリクルーティングでは、徹底して学生目線で情報提供していくため、もともと「A社」と検索しなかったけれど、実は会社の傾向にマッチするチャレンジャブルな学生も採用できるのです。

「ユーザーはいきなり指名検索しない」、これが多くの企業が気づいてない事実

ここで、わかりやすく理解していただくために、まったく別の事例でご説明してみましょう。
筆者が広島出身なので地元のネタで大変恐縮なのですが、広島市の流川町というところに、「ばくだん屋」というつけめん屋があります。地元では非常に有名なお店なのですが、果たして初めて広島に来た観光者がいきなり「ばくだん屋」と検索するでしょうか? 屋外広告や新幹線等の車内広告をあらかじめ目にしていたら、もしかしたら検索するかもしれません。しかし、通常、「流川で美味しいものが食べたいなあ」と思う観光客は、まずは「広島市 流川 グルメランク」というワードで検索する等、「広島市の流川で美味しいもの、名物は何か?」という調べ方をするでしょう。すると、お好み焼や瀬戸内海の小魚料理、牡蠣等の情報が出てくる。その中に「つけめん」という選択肢も出てきます。では、そのときユーザーがつけめんを選択したとして、次にどういう行動にでるしょうか。おそらく、「流川 つけめん」と比較検索をするでしょう。せっかく食べるのであれば、クチコミが多かったり、評価が高いお店に行きたいはずですよね。そこで初めて「ばくだん屋」という選択肢が出てくるわけです。「ばくだん屋」という選択肢が選ばれて初めて魅力点を伝えることで、ユーザーが求める情報と情報を提供したい側(今回のケースでは「ばくだん屋」)がマッチすることになります。
つまり、ユーザー主導のいまの時代、この情報探索行動のステップを想定してコンテンツを用意し、下へ下へと誘導していくことが必要なのです。

<広島の流川に来た観光者の検索行動ファネル>

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実は、ほとんどの企業のウェブサイト、またはウェブコンテンツの提供における課題はここにあります。見たくもないコンテンツをSEO対策を工夫して上位に持ってきたとしても、「もっと読んでみたい」というユーザー目線での有益性の高い情報がなければ、ユーザーはそのサイトに滞在してくれません。
A社の「SCIENCE SHIFT」では、学生が就活準備を始めるよりも、さらにその前段階のまだ就活の意識を持ってない潜在時点から、「未来を作る若者を応援する」というコンセプトを元にコンテンツを発信することで、学生とのエンゲージメントを着実に構築しているのです。

ペルソナ設計とジャーニーマップ

学生を支援するコンテンツをつくるには、伝えたい相手、つまりエンゲージメント(関係性)を構築したい学生像を明らかにする必要があります。これを「ペルソナ設計」と言います。ペルソナ設計では、実際に採用した学生にインタビュー等を行い、その情報探索行動(ジャーニーマップ)や価値観、趣味等の情報をこと細かに調べます。
また、学生の就活時の検索エンジンの利用状況を調べることもあります。就活生がどのようなキーワードで検索行動を行っているかご存知でしょうか? 実際に調査をした学生の検索行動の中でも、とくに多かったキーワードの推移をご覧ください。

<新卒学生の検索ワードボリューム推移 ※一部抜粋>

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学生の情報探索行動を調べることが、適切なコンテンツ制作の足掛かりとなる

さて、前述のグラフをご覧になって、何を感じましたか? 押さえておいていただきたいのは、就活が本格化する2月~3月末までに広告やコンテンツを注力していくのではすでに遅いということです。言い換えると、学生はこのタイミングでは就活をする気持ちが高まり業界研究もしたうえで挑んでいる状態、つまりすでに顕在的な段階であり、行きたい企業はほぼ固まっている状態にあるということです。また、この時期には、競合他社も本格的に採用活動を始めていきます。注目しなければならないのは、インターンシップを企業が始める前年の7月くらいから勝負が始まっており、さらに言えば、学生が就職のことを考え始める1年生・2年生の段階からエンゲージメントを築くことが理想だということです。つまり、他社との差別化も含めて、潜在的な段階でいかに関係性を築けるかが重要なポイントだと言えます。
データを元にしてプランニングすることを「データドリブン」と言いますが、データドリブンに根拠をもって、就活生の検索ニーズ(情報探索行動)をとらえ、「認知→検討→決定」の3フェーズに分けてコンテンツを用意していくことが重要です。

押しつけないコンテンツ提供で、マーケティングオートメーションを使う

さて、ここまで簡単にコンテンツの話についてご説明しました。それでは、実際に「SCIENCE SHIFT」で行われている施策全体図とほぼ同じものをご覧ください。

<インバウンドリクルーティングの全体図>

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「SCIENCE SHIFT」という押しつけずに就活を応援するインバウンドサイトのほかに、A社では自社サイトの中でも新卒採用サイトを用意していますし、当然リクナビも展開しています。これらは、それぞれ役割の違うメディアですが、そこから得られるクッキー情報やメルアド情報等のリード情報をマーケティングオートメーションシステムに統合していきます(例えばHubSpot等)。ここでマージ、パージと言われるデータクレンジングを行い、メールを中心に「押しつけないコンテンツ提供」を行います。これを「リードナーチャリング」と言います。このリードナーチャリングの具体的な進め方については、次回の記事でご紹介いたします。

本記事のまとめ

  • 多くの企業のウェブサイトは、自社の自慢話(押しつけ)が中心となっている
  • 「もっと読んでみたい」と思える、有益性の高いユーザー目線での情報提供が必要
  • 学生の検索行動(ジャーニーマップ)をとらえることが重要
  • 就活の意識を持っていない潜在段階から、関係性(エンゲージメント)を構築していくことが大事

さて、今回の<インバウンドリクルーティング入門vol.3>では、インバウンドリクルーティングの具体的な事例をA社の「SCIENCE SHIFT」というインバウンドサイトを元にご紹介しました。
次回の<vol.4>では、どのようなシナリオで情報発信し、ナーチャリング(育成・関係性の構築)をしていけばいいかということについてお話しします。

続きの記事はこちら>>コンテンツもメールも、情報提供は徹底した「学生目線」で!

PROFILE

エリアシ編集部

株式会社電通西日本

エリアシ編集部です。地域のマーケターのみなさんに必要として貰えるコンテンツを目指して、エリアシを運営中。お役立ち情報を発信していきたいと思います。

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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