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事業の黒字化は基盤づくりにあり! スタッフのスキルが明暗を分ける!?~実例で学ぶ、基盤づくりの重要性~

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.20〉

「事業の黒字化」は、しっかりした基盤づくりから

通販事業を立ち上げて成長させていくうえで、最初のステージが「事業の黒字化」です。これまで説明してきましたが、このステージでは、単なる経営数値的な黒字化というだけでなく、事業をさらに成長させていくための基盤づくりも、同時に行わなければなりません。小手先だけで数値目標を達成してしまうと、その先で苦労する可能性が高くなるリスクを、内在することになります。大きな資金を投入したり、セオリーではないプロモーションが運よく「当たる」ケースを除けば、黒字化までに数年かかることは、通常範囲ですので、建築物で例えると基礎工事とも言えるこの時期に、しっかりとした基盤づくりをしておきたいところです。

では、この基盤づくりが不十分だと、どのようなことが起こるのでしょうか。実例を交えてケーススタディしていきたいと思います。前回の記事では、とくに意識してもらいたい「①スタッフの育成・スキル向上」「②組織体制の整備・強化」「③取引先の充実」の3点を挙げました。これに沿った事例を数回に分けて説明していきましょう。

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[事例]企業紹介

A社:これまで化粧品を扱う通販以外の事業を行っており、業績は好調。通販市場の可能性を期待して、これまで扱っていた化粧品で通販に参入。少なめのアイテム構成で展開する。スタッフは少人数で、独自性と機能性が高い商品をテレビ媒体で展開して、大幅な売り上げ拡大に成功。

B社:これまでは流通系で卸~店舗委託販売(BtoBtoC )を行っていたが、新たなチャネル開拓として通販事業に参入。健康食品、化粧品、食品等、多くのアイテムを扱う。スタッフは少人数で、これまでの業務と兼任で推進。5年以上経過し、ようやく黒字化が達成できる状況に。企業イメージはよく、知名度は高い。

※この2例は、実例をもとに、説明しやすいように少し脚色しています。

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A社のケース:スタッフのスキルアップ不足、リピート対策不足

プロモーションが運よく「当たる」。これは短期的にみるとラッキーとも言えますが、最重要課題であり投資リスクが大きな、新規顧客獲得(CPO)が顕著によくなると、黒字化が早い段階で達成できるようになります。このように、黒字化の時短は経営的には大きなメリットなのですが、ある程度時間をかけることで、蓄積されるスタッフのスキルが追いついてこない、というデメリットが生じやすくなるのも事実です。

また、事業が一定以上の規模になると、スタッフの増員が必要になりますので、運営していくための組織づくりも、後手になってしまう傾向が見られます。事例で挙げたA社がこのパターンです。客観的に見て、独自性も機能性も高い、よい商品を展開しており、これがテレビ媒体で「当たった」のですが、従来の媒体レスポンスの想定CPOから、はるかによい数値が出ました。

当然、A社は出稿を一気に増やして売上は拡大。しかし、媒体出稿(新規顧客獲得)は繰り返すとCPOが悪化します。単純な出稿の繰り返しだと、悪化速度は速くなるので、これを回避するためのさまざまな対策としては、「媒体を増やす(開拓する)」、「最適な出稿サイクルを検討する」、「クリエイティブを開発し、ローテーションパターンを設計する」等があるのですが、これらはある程度経験しながらスキルとして蓄積されていくので、運よくスマッシュヒットしてしまうと、現場は考えながら試行錯誤をする必要性を感じられないくらい忙しくなってしまい、結果的にのちのち必要である経験が積まれなくなるのです。

このA社の場合、媒体がテレビであることから、CPOの悪化には少し時間的な猶予があったので、レスポンスが低下する前に、ある程度の売上規模と黒字化を達成できました。しかし、陰りは徐々にあらわれるので、売上を伸ばすための販促活動を行う一方で、この先に訪れる実績低下への対策を同時に進めることが必要になります。こちらのケースでは、メインで担当しているスタッフ自身のスキルアップが売上増のスピードに追いつかず、売上曲線が下降し始めた時に対応できなくなっていたのです。

そして、もう一点の致命的ともいえるリスクが、リピート対策の不足です。ある程度のツールは準備していましたが、このA社も定期購入制度をリピートの土台にしていましたので、自動的に購入が発生するという、一見便利で効率的な仕組みに頼りすぎてしまい、自社顧客に対してのきちんとしたコミュニケーションや商品情報の提供、継続使用に向けた期待感の醸成等、リピートに必要なさまざまな対策が取れていませんでした。

恐らく、A社の担当者はリピートに対する重要度をあまり感じられていなかったのではないでしょうか。急激に伸びる業績と、その動力源である出稿という業務に手いっぱいで、短期間のうちに少人数のスタッフで売上を拡大したことを考えると、手を動かす仕事がかなりの量だった事は容易に推察できます。では、このような場合はどうすればよかったのでしょうか。

現場スタッフは目の前の業務に追われがちになるので、推進担当者にすべてを期待するのは少し難しいように思います。やはり、事業稼働前にきちんと計画を立てて、事業成長に合わせた課題を設定したり、媒体レスポンスが悪化することを考えて、次に何が必要かを想定しておかなければなりません。そして、計画通りに進まないのが現場です。ですから、担当者のみに任せずに課題の進捗管理などのマネジメントの機能が必要なのです。

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B社のケース:事業成長に関するスタッフのスキル不足

一方、B社の場合はA社とは異なる経緯をたどったのですが、同様のデメリットが生じてしまいました。一応の黒字化まで成長したものの、実は通販事業の仕組みや販促手法の理解、BtoC のノウハウの蓄積がほとんどない状態でした。なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。

このB社は扱うアイテムがたくさんあり、化粧品や健康食品よりも、お客さまに購入していただきやすい食品系を多く扱っていました。そして、企業の知名度やブランドイメージも良好でしたので、数年間でWEBにじわじわと誘引し、顧客が増えていったのです。そして、これは知名度と企業イメージがよい企業の大きなメリットなのですが、リピートしやすい傾向にあるのです。少し厳しい見方をすると、具体的な打ち手の結果と言うよりも、B社のリソース(資産:知名度や企業イメージ)と時間の経過による自然増という流れで黒字化したのです。しかし、担当者は目の前の作業を進めるにとどまっており、次のステージへの課題設計等が不足していたので、本格的な事業成長のために必要な自身のスキルの過不足をとらえきれていませんでした。

B社のように元からある企業のリソースと時間経過が要因で事業が形成された場合、比較的費用は抑えられます。ところが、黒字化のタイミングで自然増のスピードよりも速い事業拡大をしていくのであれば、今後のための投資をしなければならず、そうなれば、リピート型通販事業のリスクである投資リスクが大きくなるのです。そのリスクを取りつつも、リスク自体を回避して成長するためには、投資や事業に関する知識が必要です。つまり、B社にはこれからの事業の成長に対してスタッフのスキルが不足しているということなのです。

さらに、経営層はもちろん、担当者もそのリスクを把握できていないので、非常に危険であると言えます。通販事業は数値指標であるKPIで仕組みをつくり、管理するというシステマチックな側面がありますが、実は属人的な傾向が強いのが実態なので、事業の状況や課題に対してスタッフのリソースが不足するととても大きなリスクに繋がるため、注意が必要です。

また、黒字化して事業規模が拡大すれば、中心となるスタッフも複数になり、誰かが辞めたとしても致命的な状態に陥るリスクは少なくなりますが、黒字化付近までは1人か2人くらいの中心的なスタッフで推進するケースはよく見られます。その場合、キーマンが育っていない、あるいは退職するといったことは、事業推進に大きな障壁となる可能性が高いので、これにも気をつけておくべきでしょう。

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結論 事業基盤構築中でも、「スタッフの成長」は最重要である

通販事業はシンプルです。単純な計算式で算出されるKPIが事業構造の骨子になっていますが、この仕組みの理解が表面的だと、「誰でもできそう」と感じてしまう方も多いようです。しかし、実際には適性と経験値の積み重ねが必要な、非常に属人的側面の強い事業なのです。黒字化以降をいかに効果的に進められるかは、それまでに蓄えられたスタッフの力量に大きく左右されるので、担当者のスキルアップはこの段階までの最重要課題といっても過言ではないと思います。また、これらは現場以外の経営層には見えにくい部分ですので、細心の注意が必要と言えるでしょう。

次回以降も、黒字化のための基盤づくりの重要性について、事例に沿って説明していきたいと思います。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

コミュニケーションプランニングセンター

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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