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事業立ち上げ、最初の段階から意識しておく3つのポイント~黒字化以降を見据える質的基盤の構築~

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.19〉

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黒字化するまでに、質的基盤の構築を

通販事業を立ち上げた最初のハードルは「黒字化」であることは、前回の記事で説明した通りです。通販事業の展開は、簡単に言うと「仮説設定→実行→測定・検証→ブラッシュアップ→再試行」の繰り返し、いわゆるPDCAを実行しながらKPIを検証し、実績を目標値に近づけていくことです。そして、黒字化することが最初のステップの目標となるのですが、この状態になるまでに質的な基盤も構築しておくことが、黒字化以降の事業拡大で重要になります。

事業の規模を拡大していくためには、スタッフのマーケティングスキルはもちろん、組織力も含めて強化していかなければならないところがB to C、つまりエンドユーザーに直接販売をしていく事業の難しいところとも言えるのではないでしょうか。

通販事業は、質(人材の適性、環境、必要スキル等)が大きく異なる業務が連結して機能します。具体的には、媒体出稿による新規顧客獲得、顧客とのCRMを含むテレマーケティング、DM等によるリピート向上等です。

そして、確保できる人材や資金の状況によって適切にアウトソーシングすることも有効なのですが、このときに自社内でそれぞれの機能をきちんと関連づけてコントロールし、ある程度の評価・目利きができるようになっておかなければ、黒字化以降の事業成長や拡張が非常に困難になるのです。

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質的な充実のための重要3ポイント

では、質的な基盤の構築、つまり質的な充実とはどのようなことなのでしょうか。黒字化以降の事業成長を視野に入れた場合、「①スタッフの育成・スキル向上」「②組織体制の整備・強化」「③取引先の充実」の3点が重要なポイントであると言えます。

通販事業は、業務がルーチン化する傾向があります。事業構造は若干特殊ではあるものの、基本的な運用はそれほど難易度が高いわけでもないので、基礎知識が備わってオペレーションができるようになると、業務を作業として回していくのは新人レベルの人材でも可能です。

ここで大きな誤解と言いますか、注意点があります。シンプルからこそ、事業の展開に関して本来考えて仮説を立てて検証し、再実施するというような知恵・スキルを蓄えていかなければならないのに、業務を単純に作業化することで人材のスキルアップが停滞してしまうのです。

また、通販事業は一から起業するというよりも、これまでに行ってきた事業のもうひとつの柱として立ち上げるパターンが多いと思います。とくにこの場合、組織体制の整備については注意が必要です。そして、外部の協力企業にまさに言葉の通り「協力」をしてもらうためには、単なる受発注というとらえ方では長い目で見ると業績に大きな差が生じるのです。これらの3ポイントについて、もう少し掘り下げて説明していきます。

①スタッフの育成・スキル向上

通販市場が大きく成長し注目を浴びている現在、ひと昔前と比べてノウハウなどの情報の収集はとても容易になりました。いま大手と言われる通販企業が事業を立ち上げ、右肩上がりで成長曲線を描きはじめた頃は、情報を得ようにも参考となるような書籍はほとんどなく、通販企業間の情報交換や先見の明のある企業オーナーの「リピート通販の法則の発見」をしなければ難しいような環境でした。

しかし、昨今の通販企業の現場を見ると、せっかくたくさんある書籍等から自主的に情報収集しようとするスタッフは少数派のように感じます。前述しましたが、通販事業の日常的な業務はルーチン化しやすい傾向にあるので、作業的になりがちな業務の背景や次の展開を考えながらオペレーションをしなければ、知識と経験の蓄積に大きな差が生じるのです。

それを効果的に行うためには、いま現在、自分たちが行っている事業の次のステップのイメージや課題等を理解しておかなければなりません。参考資料や事例もまったくなく、現状行っている作業傾向が強い業務の中からセンスだけで次のイメージを感じることができる人材は少数派だと思います。しかし、書籍等で情報を得ておけば、通販事業に必要な考える力をつけていくことが可能になると思います。
考える力をつけることでマネージャーや部長クラス、つまり事業を設計して運営していける人材になれるか、あるいは現場業務の実施とその調整しかできない人材のままなのか、3~5年で取り返しがつかないくらいの致命的な差が生じるのです。

そして、もうひとつ重要なのが、OJT(On the Job Training=実際に業務を進めながらの知識・スキル向上)です。前述した「情報の収集」は書籍等で比較的簡単に対応できるのですが、OJTを行うには現場に一定以上の経験と実力のあるスタッフが必要となります。通販事業を新たな事業として立ち上げる場合、さまざまな部署からスタッフを選定すると思います。しかし、実際には経験者がいないケースがほとんどです。そのため、そのまま未経験者が手探りで業務を進めていくことも少なくありませんが、こうなると非常に大きなリスクがあると言わざるを得ません。顧客を自社で管理し、直接マーケティングを行う通販事業。新規顧客獲得とリピートの販促バランス(予算)を考えた事業計画と、それに基づいた現場業務の推進を行わなければ、利益に対するマイナス影響が大きくなるというリスクがあるため注意が必要なのです。

実際に、現場でOJTを行える環境をつくるには、

  • [1]社内スタッフから経験のあるスタッフを選定
  • [2]経験者の採用
  • [3]外部協力会社の活用

等の方法があります。[1]は運任せの側面があります。と言うのも、経験者がいなければ実現できないということになるからです。また、現行の業務との兼ね合いがあり、人選と配属は自由度がきかないことの方が多いのが実態のようです。[2]は中途入社の新人スタッフに事業の推進を任せることになるので、選定にはしっかりとしたスキル・実経験・人柄の確認が重要になります。[3]はコストの支出はありますが、一番リスクが少ないと思われます。ただし、雑誌等で習得できるような机上論や情報のみでは十分ではありません。外部の協力会社にしっかりと実業務のプロセスを見てもらい、方法論だけではなく事業推進における課題やビジョンまでをOJTできるかが、わざわざコストを払う価値があるかどうかの見極めになるのではないでしょうか。

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②組織体制の整備・強化

前述の「①スタッフの育成・スキル向上」と重なるのですが、事業立ち上げ当初は少人数、もしかすると従来の事業と兼任ということもあるので、みんながプレイヤーとして業務を推進するケースが多く見られます。しかし実は、この「みんなが実業務に取り組む」ということが重要なのです。通販事業は特殊ではあるものの、構造はシンプルなので、書籍等をしっかり読めばビジネスモデルの概要を理解することはそれほど難しくありません。その理解した情報をもとに実際に販促を行い、検証→再実施を繰り返しながら得られる経験が非常に重要であり、組織の強化につながるのです。

ですから、少人数での立ち上げの場合は、事業がある程度の状態になるまではあえてみんなで業務推進に取り組んでもらいたいと思います。そしてその中から、事業が安定化し人員も補充するタイミングでマネージャーとして対応できる人材を選定するのです。実業務経験がない方は、通販事業推進のキモとも言えるOJTができないので、現場の管理者としては望ましくありません。

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③取引先の充実

通販事業は、外部協力会社の力(ノウハウ、スキル等)を活用しながら事業を成長させていくのが一般的です。事業立ち上げ初期はとくに外部依存度が高く、事業規模が拡大して売上や組織が充実してくると内製化する傾向が強いと感じています。それゆえに、外部協力会社の強化は効果的な事業推進に大きく関係します。

扱う商材にもよりますが、独自性が高い商材を扱う場合はこの外部協力会社の強化、つまり取引先の充実がとくに重要となります。外部の企業との連携にはさまざまな理由と目的があると思いますが、通販事業社の多くが外注する大きな理由は、専門的スキルの外部補完ではないでしょうか。資金面や人材面等を考えると、専門性が高い機能は外注した方が効率的だからです。

とくに、売上に関わる機能のいくつかに関しては、単なる業務の外注というより、自社業務に対するスタッフを「育成する」という意識でとらえた方がよいでしょう。独自性の高い商材を扱う通販事業の場合、商品理解はもちろん、購入してくれた顧客の特性におよぶまで理解を深めていくことがプロモーション成功のカギになるからです。それは、情報の充実だけでなく、事業社の企業理念や顧客に対するホスピタリティ等も含まれますので、育成には時間がかかります。また、事業が一定の規模になれば必ず外注業務の内製化という課題が出てきますので、発注業務を外部協力会社にすべて任せるのではなく、内容や根拠をしっかりと共有して自社内に知識と経験を蓄えておくことも必要です。

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最後に

以上、事業立ち上げの最初の段階で意識しておくこととして、少し詳しい説明をしました。しかし、これらは黒字化以降も継続して意識しておくべきことでもあります。最初の時期に土台をつくっておかなければ途中から対処するのが難しいことですので、黒字化以降の事業成長を視野に入れ、最初からしっかりと意識して取り組むべきでしょう。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

コミュニケーションプランニングセンター

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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