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事業開始から安定期まで、押さえるべき5つのポイント ~失敗しない事業計画のつくり方・運用の仕方~

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.11〉

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新しい事業を展開するには、まず始めに事業計画を作成する必要があります。これは通信販売事業に限ったことではありませんが、他の事業ではあまり使わないKPIを軸にして数値計画を組み立てることになるので、スタッフにある程度の経験者がいない場合は注意が必要となります。今回は、事業開始から安定期くらいまでの事業計画の作成・運用のポイントと注意点について述べていきたいと思います。

事業計画の作成・運用のポイントと注意点

通信販売事業は、前回説明したように、経験がない方にはなじみの薄いKPIを活用します。具体的には、現場で頻繁に使うCPOやLTV等を事業計画と連動させておかなければなりません。つまり、事業計画の作成者と運用者がこれらの数値をしっかりと理解したうえで作成し、活用することが大前提となるのです。。

注意すべき点は数多くありますが、とくに重要なうえに、実際に現場で不具合を目にすることが多いポイントを5つあげてみました。

  1. 責任者はKPIを理解し、運用する現場ときちんとやり取りができるようにする
  2. 計画数値と運用(PDCA)はきめ細かく
  3. 費用は目的別に分類をする
  4. 途中で計画値の検証と修正を加える
  5. 専門的な知見を加える

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以下、それぞれのポイントに関して、事例もまじえながら詳しく説明していきましょう。

1.責任者はKPIを理解し、運用する現場ときちんとやり取りができるようにする

事業の責任者に社歴が長い年長者が就いた場合に、とくに注意が必要なポイントです。通販事業のKPIは単純な数式で算出されるので、理解すること自体はさほど難しくありませんが、現場で運用するとなると慣れと経験が必要です。
責任者に現場経験がないと、「頭ではわかっているけど、実際に活用できない」状態に陥ることが多いようです。これに対して、現場で運用するスタッフは実経験を重ねていくので、KPIと現場の状況をリンクして捉えることができるようになります。

このような状態が続くと、現場と責任者とが事業に関して具体的な対話をすることが難しくなってきます。責任者は目標値のみを提示し、目標を達成していれば何も言いませんが、未達成の場合、現場から提示される改善策を理解できなくなります。つまり、責任者は売上や利益といったKGI視点でしか話ができないのですが、現場はより具体的なKPIとそれに直結した対策の説明をするため、現場経験のない責任者がKPIと関連づけた具体策を理解できず、きちんとした議論が交わせなくなってしまうのです。

とくに、投資リスクが大きい新規顧客獲得は、事業が安定化するまでは最重要課題のひとつなので、責任者と現場運用者が具体的な議論ができないという状況は、その事業成長に大きなブレーキをかけることに繋がります。このような、現場と責任者とがまったく会話になっていない実例を目にすることは意外と多く、その結果、現場は数値未達成を責められるだけでモチベーションも低下してしまいます。また、「どうせ聞いてくれないから」という前提になってしまうため、きめ細かな計画を立てなくなり、その場しのぎの対応になってしまう、という悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。

事業開始から安定化するまでは少人数で対応する企業が多いと思いますが、責任者に任命された方はぜひ現場の方と一緒に実務を経験することをおすすめします。手間だと思うかもしれませんが、現場での実務経験は責任者にとって具体的で必要な経験を積むことができるよい機会なのです。

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2.数値計画と運用(PDCA)はきめ細かく

通販事業の立ち上げ期から安定期までは、ほぼすべてのプロモーションに対しての効果測定が可能なので、事業が安定するまでは細かすぎると思うくらいきちんとした数値管理・効果測定を徹底してください。通販事業は、現状と先の展望を見据えるために必要なデータを新規顧客獲得のCPOとリピートのLTVですべて数値化・共有できるという、データ管理が非常に重要な事業モデルなのです。

反面、主となるKPIを掘り下げて、より多くの指標となる数値を設定することもできますが、現場で運用できないレベルまで数値を細分化することも現実的ではないのです。とはいえ、事業立ち上げから数年くらいの多くの企業では数値管理は大雑把になる傾向が強いので、どちらかと言うと細かく見ていく方に重点を置いたほうがよいように思います。

この大雑把な例として、投資リスクの大きな新規顧客に関するCPOしかきちんと見ておらず、顧客の状態(人数や活性・非活性等)やリピートの傾向等が視野に入っていないケースがよく見られます。通販事業、とくにオリジナル商品等でリピート性を重視する事業モデルでは、顧客の状態やリピートの詳細を把握しておかなければなりません。しかし、日常的に出稿や広告制作等の業務を行うことの多い新規顧客獲得の販促に労力が集中する場合が多いので、リピート性重視にも関わらず、目の前のCPOだけにフォーカスしすぎて事業を進めているような企業をよく目にします。

事業計画の適正な運用は、事業を健全に成長させていくうえで非常に重要です。こればかりは経験を積んで慣れるまでのんびり待つわけにはいかないので、経験の少ないスタッフィングしかできない場合は、社外も含めて実務経験のある専門家にチェックとアドバイスをもらったほうが、リスクを最小限にしながらスタッフの効果的な育成にもつながるでしょう。

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3.費用は目的別に分類する

通販事業は、ある程度の規模になるまでは厳密に効果測定ができます。「ある程度の規模になるまでは」と前置きしたのは、規模が大きくなるとブランドイメージの認知や浸透、顧客の利便性の向上等、効果測定がしづらい対策が増えていく傾向にあるためです。もちろん、「ある程度の規模になるまで」の期間であっても、あまり短期的な目標設定に偏って進めると弊害もあるのですが、基本的にはできるだけ目標値を設定して、それに対してのPDCAを行う推進が望ましいのです。

販促の目的は、大きく分けて新規顧客獲得とリピートの2つです。この2区分に対して、必要な費用を割り振っていくとやりやすいと思います。そして割り振った後に、どちらに区分するか難しい項目、たとえば人件費等は別項目で管理し、全体の損益を見るときに反映させるやり方がベターではないでしょうか。

なんらかの基準を設け比率で案分するやり方もありますが、事業の規模が小さいときにそれをすると実態が捉えにくくなる場合があるので、別管理をおすすめします。リピート型の通販事業の場合、事業立ち上げから数年は赤字ということも少なくありません。むしろ、なんらかの支援や特別な戦略がない場合、黒字化まで数年かかるのは一般的とも言えます。ですので、費用を区分してそれぞれに対する目標値を設定する際に、単純に短期的な損得のみで判断することは必ずしも正解であるとは言えないのです。

一番の難問は、新規顧客獲得とリピートそれぞれに対して、どのように目標値を設定するかということではないでしょうか。単年度のみでの損得ではなく、売上、利益、投資できる費用、黒字化する時期等を数年間のスパンで見て設定することが重要なのです。

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4.途中で計画値の検証と修正を加える

通販事業の売上計画は、主に新規顧客獲得(CPO)とリピート(LTV)で構成されますが、事業立ち上げ時は多くの場合、実測値ではなく見込値で組み立てることになります。しかし、CPOやLTV等の計画の土台となるKPIは予想通りにいかないことが多いため、最低でも事業開始から3カ月~半年のタイミングでKPIをきちんと計測し検証したうえで、実数値に基づいた計画の修正を行うようにしてください。

このような数値管理は、現場では不足はあるにしてもある程度は行っているのですが、管理者や上層部としっかりと共有できていないことがよくあるようです。そもそも、新規顧客獲得で投資をして、リピートで回収しながら顧客数(リピーター)を増やすことで、黒字化の土台をつくり安定的で計画性の高い事業推進ができるという通販の事業モデル自体がなじみにくいので、数値計画の見込値や実測値の把握・修正は、ある程度事業が軌道に乗るまでは、現場スタッフのみでなく責任者・上層部を巻き込んだほうがスムーズに進めることができます。

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5.専門的な知見を加える

「できるだけ、自社スタッフのみで学びながら」という方針のもと、事業を立ち上げ進めていくというケースもよくあります。自社スタッフで考えながら事業成長とスタッフ育成を実現していくというのは、非常に重要であり必要な考え方だと思います。

ただし、ある程度の顧客(リピーター)を獲得し安定的な事業展開ができる状態になるまでは、投資リスクが存在する事業構造なので、スタッフの勉強・育成のためだけに重点を置きすぎるのはリスクが大きくなる可能性があります。
これに、責任者や上層部に事業立ち上げの経験がないという状況が重なると、事業を立ち上げたはよいが予定よりも大きく遅れが生じ、しかも重要視していたスタッフ育成も自己流が強すぎて、知識や経験が属人的になりすぎてしまう、ということも少なくありません。

極端な事例を2例紹介します。
1例めは、通販事業を立ち上げて約5年の企業。ようやく黒字化にたどり着けたのですが、上層部が事業構造を理解不足のままで現場スタッフに任せっきりだったので、それまでの悪かった箇所や改善された箇所が具体化されておらず、また現場のスタッフも状況を感覚でしか捉えられていませんでした。このような場合、スタッフは自己流で根拠のない自信を持ちやすいので、上層部に見せる計画は見栄えだけのものになり、実際には自分たちの場当たり的な裁量で現場を運営するようになっていました。「売り上げと利益が確保できればよい」という結果論的な考えもなきにしもあらずですが、このような状況ではいざというときに対応や改善がしにくい等、非常に大きなリスクを内包してしまいます。

2例めは、広告がうまくあたり一気に売上を伸ばした企業。年間売上20億円を超えたまではよいのですが、こちらも上層部は事業構造の理解や状況把握をほとんどしておらず、現場に任せきりでした。当然、好調ばかりが続くわけはなく、売上が鈍化してきたときに上層部から改善を強く要請したのですが、それに対して現場から提示された目標と対策が理解できず、結局キーマンだった現場スタッフが退職したため、売上は一気に半減以下となり、なんと赤字化してしまいました。

これらの2例は極端な事例ではありますが、同じようなリスクを内包し、非常に非効率的な事業運営となっている企業は結構あるように感じます。顧客管理をベースとし、新規顧客獲得とリピートで事業を強化していく通販事業は、非常にシステマチックな側面がありながら、実は経験に基づいた現場運用も同じくらい重要なのです。自社内完結もよいのですが、事業推進の指針となる事業計画作成と運用に関する定期的なチェックは、それなりに経験のある方や専門家に頼ってもよいのではないでしょうか。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

コミュニケーションプランニングセンター ビジネス開発部 

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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