「人がものを買う」心理とは?
Vol2に引き続き、「人がものを買う」とはどういう心理に基づいているのかを改めて考えます。前回は、何らかの悩み(マイナス)を抱えていて、それをプラスマイナスゼロ(できればプラス)にしたい。「その悩みを解決してくれるのは、この商品だ!」と思ったときに、『買う』決心をする前提で、お話をさせていただきました。ただし時には、予算の面で諦めたり、デザインやサイズ等、他の悩みの方が優先順位が高かったり…。同じような商品が低価格で売っていれば、ブランドにこだわらずそちらを選択するかもしれない、離脱要因も同時にお話しました。買い物途中であきらめさせず、他社の商品との比較もあまりさせたくない。こういった理想は商品を売るときに誰もがもっていると思います。今回は、できる限り余計な検討余地を与えないためにどうするかを考えたいと思います。
もちろん買い物に、比較や検討はつきものです。ここでの“検討余地”は、少なからず、あなたの商品を検討している、買うマインドにある(なりつつある)状態のターゲットが、他社の商品へ「浮気」「心変わり」する、または、他社の商品が比較対象に入ってくることを指します。
売れるために大事なことは?

現在は、商品機能上、オンリーワンになることが非常に難しく、価格・デザイン・ブランド力・作る会社・売る会社の理念や姿勢など、総合力で消費者に選ばれる時代です。どれだけ高機能でも、消費者が比較をしやすい状態にあり、最初は自社商品を調べていたのに、途中で、少し安くて似たような機能の商品に目移りする、など買い物の“妥協点”も見つけやすくなったのではないかと思います。もっている悩みに対して、解決策がその機能を有した商品を買って使うことだとしたら、たいていのことは解決できてしまうでしょう。では、どう差別化すればよいのでしょうか。大幅な投資をしてフルスペックにしたり、他社よりも多く有効成分を含有させることでしょうか。それを考えていきたいと思います。
まず、自分が商品を買う時の判断軸を、考えてみてください。恐らく大きな悩み(掃除機なら部屋をきれいにしたいという基本の悩み)から、小さな付随する悩み(電気代が安い、軽い、排出する空気がきれい)など様々な要因があると思います。これらの機能をもし網羅しているのだとしたら、もちろん伝えるべきですが、肝心の差別化とは、その“伝え方”にあります。
今、あなたが売っている商品のサイトや広告、パッケージなど、消費者の目に触れるあらゆるものを、チェックしてみてください。そこには、その商品を買うことで「何が叶えられるのか」、「どう暮らしが快適になるのか」、「どう心が満たされ、どんな気持ちになるのか」が書かれているでしょうか。つまり、買う人の買った後の素晴らしい姿を、描けているでしょうか。

例えば、あなたは今、子ども向けの運動シューズを売っているとします。「速く走りたい」と思う子どもたちに選ばれるのだとしたら、他社にも同様の商品があり、叶えられるかもしれません。でも、あなたがこれから考えるべきは、自社の商品だけが叶えられる夢を描いてあげることです。自社商品の機能や他社の競合商品にもある似たような機能を声高らかに謳うことではありません。
悩みを分解し、そこを解決した先にある姿を描く。
まずやるべきは、悩みを分解することです。「足が速くなりたい」という悩み1つをとっても、それは表層的な悩みです。他社もそこは解決できると、訴求する可能性があります。それではこの「足が速くなりたい」という悩みを分解すると、どういうことがわかるでしょうか。
「足が速くなりたい」の、もっと手前に、「なぜ速くなりたいのか」という深層心理が必ずあります。「リレーの選手に選ばれたい」、「好きなあの娘にふりむいてほしい」、「あいつには負けたくない」、「運動会で目立ちたい」などなど。つまりここが解決された姿がまさに、足が速くなった後に待つ、輝かしく素晴らしい自信に満ち溢れた姿なのです。だからあなたも商品サイトや広告で、「速くなる」ことと、「それを裏付ける機能」を訴求するのはそこそこに、買ってほしいターゲットの深層心理を考え抜き、買った後の姿を描くことに注力すべきなのです。
どう描くかという課題
様々な方法がありますが、買う前と買った後、つまりビフォーアフターを描くことが最もわかりやすく最短で、課題を解決できると思います。
これまで買ってくれた子どもたちから、シューズを買ったことで得た成果や思い出(シューズだけではなく本人の努力も、もちろんあります)を、感想文キャンペーンで募集し、サイトや広告で紹介する方法や、実際の購入者に広告に出演いただき、生の声を語ってもらう方法もあります。
大事なのは、「●万足販売」や「98%のタイムが上がった」ということもそうですが、「実際に買ったひとが、どんな姿に生まれ変わったか」を教えてあげることです。
通販は、お店も店員さんもいません。消費者が自ら情報を取捨選択し、購買意欲をかりたてていく必要があります。気になっている、という状態から、徐々に興味を引き出し、この買った後の姿を最後の一押しとして、機能させてみてはいかがでしょうか。そうすれば、他に目移りする前に、そこで決めてくれるひとも増えてくるかもしれません。