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具体的なケースで学ぶ! スタート前に必要な通販事業戦略の検討とは?

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.7〉

安易な事業参入は危険! だからこそ事前の戦略が必要

通信販売事業をスタートする前に事業戦略を形づくっておくことについては前回の記事〈vol.6〉で少し触れましたが、とても重要な内容ですので、今回はもう少し詳しく掘り下げて説明していくことにしましょう。
通販市場が成長しているという明るい側面だけを捉えて、事前に戦略を検討することなく、「ホームページを作成して商品売上を拡大しよう」「大手ショッピングモールに出品して拡販しよう」という表面的で安易な事業立ち上げをすると、その通販事業はほぼ停滞するでしょう。商品が画期的で、話題性が喚起されるような、なんらかの大きな追い風があれば別ですが、大切な自社の事業を運任せにするのはリスクが高すぎます。「そんな安易なことをする企業はいないよ」と思うかもしれませんが、実際に比較的大手と言われる企業でも、このようなケースが散見されるのです。確かに、従来の流通店舗販売が不調で、ニュースに取り上げられる企業や話題は通販関連が多いこと等が、そのような安易な事業参入を促す一因になっているのかもしれません。通販は成長市場ではありますが、その一方で、多くの企業がさまざまな商品やサービスを投入してきているために多様化し、過当競争の状況になっています。だからこそ、「自社の商品・サービス・ブランドでどのように戦うか」という通販事業での戦略を、きちんと事前に考えておく必要があるのです。

前回の記事では、戦略を考える際には大まかに「通販事業で得るメリット」「扱う商品・サービスの属性(強み)」「販売方法」の3項目で整理してはどうかと、ご説明しました。通販市場は多様化しているので、別の区分や検討をしたほうがよい業種や商品もあるかと思いますが、新規参入が激しく通販と相性がよいとされる「化粧品」「健康食品」「食品」のB to C(Business to Consumer:企業が個人に対して商品を販売する取引形態)であれば、この考え方である程度状況を整理し、事業戦略を検討することができるでしょう。

[事業戦略を考える際の3視点 / そのパターン]

① 通販事業で得るメリット/
「販路拡大」「自社顧客化」
② 商品・サービスの属性(強み)/
「一般流通商品」「オリジナル商品」
③ 販売方法/
「自社主体」「他社依存」

具体的なケースで考えてみる、事業戦略の検討方法

それでは、事業戦略の整理・検討のしかたについて、以下ふたつのケースを元に具体的に説明していきましょう。

〈例1〉強いオリジナル商品がある会社の場合

業種:
健康食品販売
商品特徴:
オリジナル商品。類似商品に比べると少し価格は高めだが、独自の製法で機能性が高い。ただし、一般的知名度は低い。
取扱い商品:
3アイテム

このケースは、すでに「商品」が存在しているので、そこからほかの項目を考えます。
まず、通販事業で得る主たるメリットとしては、「自社顧客化(顧客リスト蓄積+顧客価値向上)」を選択したほうがよいでしょう。もちろん「販路拡大(集客)」も並行してよいのですが、人員や費用等を考慮して小規模でスタートする場合は、やはり「自社顧客化」に絞ったほうがよいと思います。ここで「自社顧客化」を選択する大きな理由は、自社商品がオリジナルであり、類似商品と比較して価格は割高ではあるものの、独自の製法や高い機能性という強い訴求ポイントがあるためです。
逆に、「販路拡大」を主目的として選択しない理由についてご説明します。販路拡大するためには大手モールへの出店・出品という手法が効果的ですが、そうするとどうしても、他社の多くの類似商品群との価格比較が強調されてしまい、オリジナル商品の特徴を伝えて割高に見える価格の理由を理解・納得してもらうことが難しくなるからです。大手モールへ出店・出品する場合、それがすべてではないものの、価格は多くの類似商品の中から選んでもらう際に非常に大きな要素と言えます。また、この例の場合、そもそも商品の価格が割高であっても機能性を高くする商品開発をしているのですから、むやみに安売り競争に参加することは得策ではありません。モールへの出店・出品等で販路を拡張し、売上を積むことは選択としては「あり」ですが、そこでの売上をこの事業の柱とする戦略は結果的に不整合が生じる可能性が大きいと言えます。
このように「自社顧客化」が主目的となると、販売方法は「自社主体の販売」がベターです。自社での集客はコスト負担(投資リスク)が大きくなるためそこに注意が必要ですが、顧客と直接コンタクトを取れるというのが最も重要な点です。とくに、販売するものが「オリジナル商品」で顧客に向けての明確な訴求ポイントがあるのですから、「自社顧客化」する最大のメリットである顧客リピートを促進するためにも、顧客に対して直接販促が行えてコミュニケーションも自由に取れる「自社主体の販売」は最善な方法と言えるでしょう。

〈例2〉多種多様な一般的商品を展開する会社の場合

業種:
珍味・おつまみ系の食品販売
商品特徴:
スーパーに並んでいる商品と同等
取扱い商品:
200アイテム

このケースも「商品ありき」なので、そこから考えてみます。
通販事業で得る主たるメリットとしては「販路拡大(集客)」、さらには他社の集客力を活用しながら売上を確保していく「他社依存の販売」方法を選択するのがよいのではないかと思います。200アイテムという多種の珍味・おつまみという商品展開では、個々の商品特徴を際立たせることは難しく、品揃えが訴求ポイントという状況です。このような場合、集客にコストがかかる自社の顧客蓄積を主目的とした「自社顧客化」展開をすることはとてもリスクが高いと言えます。他社類似商品との商品自体の差別化が難しければ、価格が競合と戦う大きな要素となり、価格勝負になる傾向が強くなります。それが集客コストと重なると、コスト面でのリスクが大きくなるからです。
また、「自社顧客化」の一番のメリットである顧客リピートも、商品の独自性や類似商品との優位性がなければ低くなる傾向があります。もちろん、産地ならではの材料を使ったり、伝統的な製法でつくったりすることで独自性等の優位性をつくることは可能ですので、実際にそれができる状況であれば、目的として「自社顧客化」を選択したほうがよいかもしれません。しかし、やはり類似商品との商品自体の差別化が難しい場合は、他社(大手ショッピングモール等)の集客力を活用したほうが、売上と事業の土台をつくりやすいのではないかと思います。

実際には上記で設定した条件以外の、事業社ごとのさまざまな強み・弱みを分析し、外部環境(市場や競合他社の状況等)も照らし合わせながら検討することになるので、もっと複雑な方針が形づくられることになります。

ポイントは「通販」「流通系店舗販売」ごと、「商品開発」も含めての戦略検討

この2例では、すでに存在する「商品ありき」で考えをスタートしていますが、本来は通販独自の商品開発も含めて事業戦略を考えたほうが、事業をより効果的に展開し進めることができます。「そんなことは当たり前だ」と思うかもしれませんが、実際には流通を通じて店舗販売をしている商品を、事前にしっかり検討することなくそのまま通販事業にもってきたりするケースも少なくないのです。商品によってはそのやり方がうまく両立する場合もありますが、事業を展開していくなかで不具合が生じることが多いように感じます。
不具合が生じる理由のひとつは、流通系店舗販売と通信販売ごとに利益と売価の設定を考えていないからです。とくに、化粧品や健康食品に比べると粗利率が低くなりがちな食品系は注意が必要です。卸売業者を通じて店舗に配置して販売する従来の販売形態と顧客と直接やりとりする通販とでは、かかるコストの種類や料率が異なります。また、通販は過去には「間接コストが大幅に少なくなる」というメリットもありましたが、その反面、販売に関わるソリューションの構築に労力とコストがかかっていました。現在ではさまざまな企業が通販事業をサポートするソリューションを提供しているためその面では楽になったとも言えるのですが、それらの利用にはコストがかかるので、以前のままの「通販=低間接コスト」のイメージで考えていると大きな誤算に繋がる可能性があります。いずれにせよ、イメージではなく、実際の数値に基づいた分析が重要です。

もうひとつは、流通系店舗販売と通販で同じ商品を展開すると、商品の価格やオファー(値引きやプレゼント等の優遇策)で摩擦が生じる可能性が高いという点です。通販で自社顧客を集客する場合はネットやマス媒体を活用しますが、現在、定価で販売することは少数派で、色々な特典をつけることが常態化しているように見受けられます。そうすると、通販と流通系店舗販売で価格やメリット差が発生し、卸売業者等の流通側からクレームが発生する原因にもなりかねません。こうなると、社内の流通販売部門と通販部門の間で軋轢が生じ、だいたい力の強い部門の発言が尊重される傾向にあるため、会社としての方針が全体のバランスを欠いたものとなるという、とても非生産的で非効率な状況に陥ってしまいがちです。
やはり、最初に会社として、流通系店舗販売と顧客にダイレクトに訴求する通信販売それぞれで、「どのような商品展開をするのか」「どのような顧客にアプローチし、どのようなブランドを形成していくのか」「利益と費用構造はどのようになるのか」等を具体化し、広い視点で先を見すえた検討をしたうえで、事前に考えられるリスクを洗い出しておいたほうがよいのです。

いまや通販は、昔のような通販専業企業が展開する特殊な業態ではなく、多くの企業が商品を販売するチャネル・手段のひとつになってきました。市場の多様化や過当競争が進み、販促の手法や展開等「なんでもあり」の様相を呈してきていますが、そのような状況でこそ、通販のメリットを享受し事業を成長させていくために、事前のしっかりした戦略検討は重要であり必須といえるのです。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

コミュニケーションプランニングセンター ビジネス開発部 

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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