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レスポンス広告の極意 第4回:売る仕組みにおけるレスポンス広告の役割とレスポンスの意味①


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さまざまなクライアントのレスポンス広告に携わってきた後藤一喜氏による連載の第4回目。今回は、レスポンスを数だけで評価してはならないということについて、二つの失敗事例から解説いたします。

レスポンスは数だけでなく質(その先のCVRや継続率)も問われる

30年前、まだ1ステップ型のレスポンス広告が主流で、メディアに広告を掲載し、いきなり注文を取っていた時代には、注文の多い広告が良いレスポンス広告でした。ところが、現在の私たちが置かれているビジネス環境は、はるかに高度化し複雑化しているため、1ステップ型のレスポンス広告ですら、レスポンス数だけで施策を評価することは少なくなってきています。

これは、環境変化に伴いレスポンス単価が高騰し、広告に対する1回の成果(取引)だけでは採算が合わなくなったからでもありますが、実際には、最初の取引だけでなく、その後の顧客維持施策において大きな収益が見込めることが、一般にも理解されるようになったからです。

つまり、ターゲットとの取引を1回のレスポンスで捉えるのではなく、関係性の構築を前提にした顧客生涯価値(LTV)[*01]で捉えるCRM[*02]の考え方が一般化したからです。

したがって、レスポンス広告における「売れる」という言葉の意味も、広告に対するレスポンスだけでなく、その後の顧客維持施策における成果(CVRや継続率)までを含めて考えるようになってきています。

つまり、今日のレスポンス価値とは、その広告に対するレスポンスの"数×質"によって評価されるようになってきているのです。

"数の評価"は広告に対するレスポンス数だけで簡単にできますが、"質の評価"はレスポンダーの実際の行動をトラッキング[*03]しなければできません。そこでCRMにおいては、実際の施策を通じてトラッキングし、その間のターゲットの心理変容、ステータスごとに異なるターゲットの課題や問題意識、関心事などの理解に努めるのです。

そしてそれらをもとに、最初の広告でどのような種類やレベルのレスポンス(見込客)を獲得すべきかを知り、その条件に適合したレスポンスを獲得するための広告を制作します。なぜなら、条件に適合しないレスポンスは、たとえいくら数を集めても価値がない――管理コストが増えるだけで、利益を生まないということをトラッキングの結果が教えてくれるからです。

*01・顧客生涯価値(LTV = Life Time Value)
顧客との長期的な関係を構築することにより期待できる取引価値の総和。
たとえば25歳で初めて自動車を購入し、60歳で最後の自動車を購入するとすれば、期間は35年間、もし5年ごとに1台ずつ買い替えるとすると、単純計算では1人当たり生涯8台の自動車を購買することになる。LTVはこの8台の販売から企業が得られる利益の総和であり、8台のうちの何台を占めるのかを"顧客シェア"と呼びます。
*02・CRM(Customer Relationship Management)
システムにより顧客情報を管理し、活用することにより、顧客との関係の強化、取引の拡張や長期化させることに力点を置いた経営手法。
顧客に最適なサービスや商品を最適なタイミングと最適な提案方法により提示することを実現し、効率の最大化(=利益の最大化)を目指します。
マス広告を多用し、新規客ばかりを追いかける従来手法とは対極にある考え方。マーケットシェアではなく、顧客シェアの最大化を目指します。
*03・トラッキング(Tracking)
広告の効果(レスポンスの質)を検証するために、レスポンス後の行動プロセスの追跡調査すること。最初のコンバージョンだけでなく、継続購買や複合購買、紹介など追加施策に対する反応状況や離脱状況などを知ることで、より精緻な顧客評価と施策評価に役立てます。

二つの失敗事例

広告主が「できるだけ多くのレスポンスをできるだけ安いコストで獲得したい」と考えるのは当然のことです。しかし、その意識があまり強すぎたり意識に比べてターゲットや販売に対する理解が不足したりしているような場合、新規客や見込客を発見するというレスポンス広告の役割そのものが破綻してしまう可能性があります。

このようなケースについて、クレジットカード会社と通販化粧品会社における二つの失敗事例をもとに説明します。

①クレジットカードの新規会員獲得施策における失敗事例

クレジットカード会社A社の新規会員獲得施策におけるCPO(*04)は約70,000円でした。ところが新規入会オファーとして、従来からの初年度·年会費免除だけでなく"3,000円分のギフト券“を加えたところ、同じメディアでほぼ同じクリエーティブであったにもかかわらず、レスポンス数は三割も増え、CPOは約50,000円に下がったのです。

これに気をよくした同社は、次に予定されていた一流企業の管理職向け施策において、入会オファーのギフト券を3,000円分から10,000円分に増額させたところ、レスポンス率は何と二倍以上に跳ね上がり、CPOは30,000台に下がるという大成功をおさめたのでした。

ところが、この施策で入会した層のカード利用率は平均を大幅に下回り、しかも正規の年会費が発生する一年後には、そのほとんどが退会してしまいました。カード発行時点では大成功と評価されていた施策が、実は大失敗であったことが一年間のトラッキングの結果から明らかになったのです。さて、何がいけなかったのでしょうか?

その後の調査により、施策の対象になった層には、競合カードのロイヤルユーザーが多数含まれていたことと、10,000円のギフト券という過剰なオファーが入会の動機付けではなく、目的化してしまっていたということがわかりました(3,000円分のギフト券の時にはこのような極端な現象は発生しませんでした)。また、A社では入会動機の理由を問わず、カードを手にさえすれば、過去の入会者がそうであったように、後は放っておいても自然にカードを利用するようになり、顧客化するものと考えていたのです。しかし、すでに競合カードのロイヤルユーザーであり、しかもギフト券欲しさに入会しただけの層は、新しく手にしたカードを財布には入れなかったようです。

CPOは従来施策の半分以下に下がったものの、ターゲットとの間に本当の意味での関係性を築くことはできず、結果的に取引も発生しなかったため、新規会員として獲得するために費やした費用を回収することは永久にできなくなってしまったのです。

失敗の原因

大きな要因はターゲット·インサイトを欠いていたこと

教訓

◆たとえ一流企業の管理職といえども10,000円ももらえるとなれば、使う当てのないカードの申し込みをする
→過剰なオファーはレスポンスの目的を変えてしまう

◆すでに他社のロイヤルユーザーであるような場合は、ただカードを持たせただけでは関係性は構築できず、実際にカードを使ってくれるようにもならない
→利用促進のための施策が必要

その後の対応策

A社では過剰なオファーを禁止し、動機付けとして適正な範囲に留めることにしました。また、入会後の初期使用を促すことが重要という観点から、カード発行後3カ月間以内に10万円を超える利用のあった層には10,000円のキャッシュバックをするという新たな利用促進施策を採用し、さらにターゲットを選んだうえで、年間50万円以上の利用には、翌年の会費を免除するというサービスも併せて採用しました。

こうした対応の結果、A社の新規会員獲得単価は、またもとの約70,000円に戻ってしまいました。しかも新しく設定した利用促進施策や、2年目以降の年会費の免除額などを合わせると、A社が負担する費用は以前よりも増しています。しかし、これらの施策の結果、A社は新規入会者との関係性を築くことに成功し、以前よりもカード利用による収入が大幅に増えたのです。さらに2年目3年目と彼らとの関係を良好な状態で維持·拡充できるようになったので、彼らを新規会員として獲得するために費やした費用は回収でき、しかも安定した収入が得られるようになったのです。

②通販化粧品の新規見込客獲得施策における失敗事例

化粧品会社であるB社は、レスポンス広告によりスターターキット(メイン四商品のミニチュアボトル
各1週間分・1,000円)を販売し、その後の本製品販売につなげる「2ステップ型のレスポンス広告」
によって成長してきました。ところが、かつては3,000円以下だったスターターキットのCPO[*04]が、近年の競合激化に伴い10,000円近くにまで上がってきてしまっていました。そこでB社ではCPOを引き下げるため、無料サンプル(メイン四商品のパウチ各3日分のセット)を開発し、広告も「スターターキット販売広告」から「無料サンプルの請求広告」に変えました。

この結果、レスポンス率は従来比の3倍以上に跳ね上がり、しかもコンバージョン率[*05]はほとんど変わらなかったので、全体の効率はかつての成長期に匹敵するほどにまで改善されたのです。

この成功に気をよくしたB社が、インターネットでも同じ施策を展開したところ、何とCPR[*06]換算では従来のCPRの約30倍という驚異的なレスポンスを獲得しました。しかし、レスポンダーからは、その後ほとんどコンバージョンが発生せず、顧客化ができなかったため、出荷したサンプル分のコストと掲載費用の大部分が持ち出しとなってしまいました。

失敗の原因

◆インターネット施策は従来施策よりも簡単に応募できるため、製品を必要としていない層の"冷やかしレスポンス"を増やしてしまっていた
→電話調査をした際に、本人が応募したことを忘れていたり、受け取ったサンプルキットが未開封·未使用だったりという割合が多かった

◆キャンペーン応募好きが集まる複数のメディアに重複掲載しており、その結果重複レスポンスが多かった

◆出荷の際に重複チェックがされていなかったために、一人のレスポンダーに何点もの無料サンプルが発送されていた

その後の対応策

B社は、サンプル請求のCPRで施策の評価をすることを取り止め、顧客引上げ単価(CPO)=「CPR×コンバージョン率」で評価することに改めました。

また、一連の経験を通じ、レスポンス率は無料サンプルの方が有料サンプルの場合よりも高く、コンバージョン率は無料サンプルよりも有料サンプルの場合の方が高いことがわかったので、インターネットなど、あらかじめ高レスポンスが予想されるメディアや"冷やかしレスポンス"が多いと予想されるメディアにおいては、有料のスターターキットを用いた施策を中心に展開し、逆に低レスポンスが予想されるメディアや"切実度の高いレスポンス"が多いと予想される雑誌や新聞等においては無料サンプルを用いた施策を中心に展開するようにしました。加えて、無料サンプルの無駄な出荷を減らすために、重複データの削除と過去の請求者やユーザーデータの削除を行なうようにしたことはいうまでもありません。

次回は、ダイレクトマーケティングの父、「ワンダーマンの金言から考える、「新規客の獲得と顧客の維持」への取り組み」をご案内いたします。

*04・CPO (Cost Per Order =注文獲得単価)
レスポンス広告の掲載媒体料を受注件数で割って算出される注文単価。顧客獲得単価とも。
*05・コンバージョン率(conversion rate=変換率)
レスポンス広告において、資料やサンプル請求のレスポンスをし、そこから本製品の購買に移行する割合。
*06・CPR(Cost Per Response =レスポンス獲得単価)
レスポンス=注文の場合は、CPR=CPOと用いられることもあるが、事例のように売上の発生するレスポンスと発生しないレスポンスが共存する場合は、前者をCPO、後者をCPRと使いわける。

PROFILE

後藤 一喜(ゴトウ カズヨシ)

広告主、メディア、通販業、広告代理店等、さまざまな立場での実務経験と幅広い業種を担務した経験を持つ。㈱カタログハウス在職中は、商品開発や制作だけでなく、多様な通販実務を担当。その後、㈱電通ワンダーマン【現 電通ダイレクトソリューションズ】(企画推進部/クリエーティブ部・部長/執行役員)、㈱ユビキタス・コア(メディアマーケティング部長)、㈱電通イーマーケティングワン【現 電通デジタル】(ディレクター室・室長/クリエーティブ室・シニアマネージャー)を経て独立。現在は㈱B2B2Cにて、レスポンス周りのアドバイザーとして活躍中。

■ウェブサイトhttp://b2b2c.co.jp/

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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