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レスポンス広告の極意 第5回:売る仕組みにおけるレスポンス広告の役割とレスポンスの意味②

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さまざまなクライアントのレスポンス広告に携わってきた後藤一喜氏による連載第5回目。今回は、ダイレクトマーケティングの父、レスター・ワンダーマン氏の金言からレスポンス広告について解説します。

ワンダーマンの金言から考える、「新規客の獲得と顧客の維持」への取り組み

売るための仕組みという視点で捉えれば、見込客の獲得施策とその顧客化施策、獲得した顧客の維持施策は、当然つながっていなければなりません。ところが、先述のクレジットカード会社A社や通販化粧品会社B社の失敗事例のように、それぞれの施策を個別に捉えてしまい、しかもレスポンス数やその獲得コスト(CPOやCPR)だけで評価してしまうという例は少なくありません。それどころかある程度以上の規模の企業においては、施策ごとに担当部署や担当者が異なることが、むしろ一般的なので、同様のリスクは各社に存在する・・・とも言えるはずです。

では、そのような事態を避けるためにはどう取り組むべきなのでしょうか?

ダイレクトマーケティングの父と呼ばれているレスター・ワンダーマン氏は次のようにその心構えについて説いています。

1.Acquire with intent to keep!

あらかじめ維持管理することを念頭において(その価値のある客だけを)獲得せよ!

2.Retain with intent to profit!

あらかじめ収益を上げることを念頭において(顧客を)維持管理せよ
(顧客理解や顧客満足はそのための手段に過ぎず目的では無い)!

括弧内は私の意訳ですが、さらに付け加えると、新規客獲得施策の目的は、数を多く集めることではなく、真に囲い込む価値のある層を選んで集めることにある――数が少なくても良いとは言わないが、質を伴わなければ集めることそのものの意味が――失われる。そして顧客維持施策の目的は、顧客を知ることや顧客満足度を高めることではなく、自ら(企業)が収益を獲得することにある――つまり収益に貢献しない顧客は、貢献するように仕向けるべきで、それに見合わない顧客は、切り捨てるべきだということを――示唆しているものと思います。

ワンダーマン氏の言葉と思えばこそ重みを感じますが、中身はどちらも誰もがすぐに思いつきそうな、むしろ思いつかなければならない当然の事柄とも言えます。新規客の獲得も顧客の管理や維持も、最終的には企業の売上と収益につながっており、そもそもそれが実現できなければ、良い商品や良いサービスどころか、それを提供する企業自体も存続し得ないのですから当然です。

しかし、前述のA社やB社の失敗事例に限らず、実際に私たちはこのような大原則を簡単に忘れ「レスポンス至上主義」に陥ってしまったり、「顧客至上主義」や「ユーザセントリック」といった聞こえの良い新しい言葉に踊らされてしまったりすることが少なくないわけです。そう考えると、私たちに「売る仕組みの大原則」を思い出させ、改めて気づかせてくれるワンダーマン氏の言葉には含蓄があります。

売る仕組みのコンテキスト ―名探偵になるな!名推理小説作家になれ!

第1回では単なる通行人(本来は購買動機を持たない無関係の層・・・と言う意味)が衝動買いをし、顧客になってくれるということについて述べましたが、実際には不特定多数のマスターゲットが、いきなりロイヤル顧客になってくれるわけではありません。

レスポンス広告によって獲得した見込客を、できるだけ取りこぼしなく顧客となるように誘導し、さらにロイヤル顧客化させるには、そのための意図的な仕掛け――段階的なコミュニケーションや取引の仕組み――多段階のステップを用意する必要があります。

たとえば、化粧品の無料サンプルを請求しただけの層に、いきなり30万円のフルセットの購入を求め、ロイヤル顧客になるかどうかの決断を迫るのは得策ではありません。顧客化のプロセスを登山にたとえるならば、断崖絶壁を垂直に登ることを求めるようなものです。せっかく大金を掛けて獲得した見込客のほとんどを、不必要に振り落としてしまう(離脱させてしまう)ことになります。

解決策としては、絶壁の高度差を細かく切り分け、さらに垂直ではなく迂回させるようにし、顧客化プロセスの"ロック·クライミング"を見込客の誰もが無理なく昇れる"階段登り"にデザインしなおすことです。一見回り道に見えますが、この段階を一段ずつ誘導し確認させながら登らせることによって、結果的には見込客を、最も短期間、最も低コスト、しかも脱落者を最小化させつつ顧客化させ、ロイヤル顧客化へと導くことができるのです。

こうして分解され階段状にデザインしなおされた顧客化プロセス――個々のコミュニケーションや手続き――は、ただ細かく切り分ければよいというわけではありません。一つ一つのステップの切り方や、繋がり方には、文章におけるコンテキスト[*01]のような意味と適切性が求められます。

たとえば、化粧品における"コンテキスト"を想定し、次のような多段階・連続的な施策を用意したとします。(図1)

図1:ビジネスにおける基本的なコンテキスト

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以下の具体例にあげる化粧品通販の場合は「メルマガ登録」だけを目的とした施策はあまり無い(化粧品通販の場合のメルマガは、ステップアップを狙う施策というより管理見込み客の繋ぎとめ施策なので、その登録だけを目的とした施策は現実的には考え難い)ので[図①]で示したコンテキストとは少し異なりますが、以下のような組み立てになるのが普通です。

  1. サンプルを購入してもらうため(だけ!)の施策
    (※無料サンプルの場合は請求してもらうためだけ!の施策)
  2. 試用したサンプルのどれかを買ってもらうため(だけ!)の施策
  3. 最初に買った製品以外の製品を買ってもらうため(だけ!)の施策
  4. 製品を買い続けてもらうため(だけ!)の施策
  5. ロイヤル顧客になってもらうため(だけ!)の施策

1のレスポンス広告の制作にあたっては、見込客から無料サンプルを請求してもらうことができ、そのレスポンダーが2の施策で求められる適切なターゲットの要件を満たしていれば、35(最終的にロイヤル顧客になってもらうこと)については考える必要がありません。

それぞれの施策が、コンテキストを構成する要素として正しくつながってさえいれば、後は個々の施策を充実させ、完成度を高めていくだけで、結果的にターゲットを効率よくゴールに導くこと(全体最適の実現)ができるからです。

1や2については目的がシンプルで軽くなり、3と4はそれを前提に考案すればよいので、それぞれの目的や機能が明確になるだけでなく、全体としての簡略化と効率化が実現されるはずです。

ここでもう一つ金言を紹介しましょう。

「名探偵になるな!名推理小説作家になれ!」

これは、私が株式会社カタログハウス在職中に、当時の社長であった斉藤駿氏から教えられた金言です。推理小説に登場する名探偵(=読者とも言える)は、ストーリーを「①→②→③→④→⑤」と前から順に追い、推理を巡らせます。しかし、その推理小説を書いた作家は、最初に結末(犯人とトリック)を決めてから書き始めているはずです。つまり、斎藤氏は推理小説自体を、前からではなく後ろから「⑤→④→③→②→①」の順で描かれているはずだという訳です。これをレスポンス広告に置き換えてみると、どうしたらロイヤル顧客が得られるのかという課題を「①→②→③→④→⑤」の順に考えるのは"名探偵"型(素人型)であり、ターゲットがロイヤル顧客化するという結末を先に決めて「⑤→④→③→②→①」の順で「売れるストーリー」すなわち「売れて違和感のないコンテキスト」を後ろから考えるのが、"推理小説作家"型であるというわけです。

販売のプロは当然後者であるべきだというのが氏の持論ですが、前回紹介済の失敗事例における「その後の対応策」や化粧品通販の場合の1から5のコンテキストを実際に考案することを考えると、なるほどと納得のいくアドバイス・・・金言です。

また、コミュニケーションや取引を多段階に分解し、それらをコンテキストとして捉えることはそれ自体が効率的だというだけでなく、インターネットにおけるログ解析の場合と同様に、購買プロセスやロイヤル顧客化プロセスにおいて、どのコミュニケーションとどのコミュニケーションの間に問題があり、どのプロセスのどんな情報を補えばよいか、あるいはどの手続きを改善すれば、顧客化をさらにスムーズに実現できるのかといった可能性の発見を容易にしてくれるという点でもメリットがあります。

次回は、「レスポンス広告の方法論・基礎編 考え方の大原則と取り組みの基本」をご案内いたします。

[*01]コンテキスト(context)
本来は文脈という意味だが、ここでは前後のコミュニケーションや施策が、
ターゲットをレスポンスやCVに導く上で、論理的・意味的に、違和感なく適切につながっているか否かの脈絡の有無という視点で用いている。

PROFILE

後藤 一喜(ゴトウ カズヨシ)

広告主、メディア、通販業、広告代理店等、さまざまな立場での実務経験と幅広い業種を担務した経験を持つ。㈱カタログハウス在職中は、商品開発や制作だけでなく、多様な通販実務を担当。その後、㈱電通ワンダーマン【現 電通ダイレクトソリューションズ】(企画推進部/クリエーティブ部・部長/執行役員)、㈱ユビキタス・コア(メディアマーケティング部長)、㈱電通イーマーケティングワン【現 電通デジタル】(ディレクター室・室長/クリエーティブ室・シニアマネージャー)を経て独立。現在は㈱B2B2Cにて、レスポンス周りのアドバイザーとして活躍中。

■ウェブサイトhttp://b2b2c.co.jp/

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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