Webサイトがいかに売上に貢献しているかを計測するのに、アクセス解析は非常に有用なツールです。しかし、アクセス解析のみですべての指標を取得しようとすると、限界も生じますし、実務に即した指標にならない場合もあるのが現実。今回は、アクセス解析をより実務に活かすための少し違った視点からの指標をご提案させていただきます。
売上貢献度の数値の出し方~CVR編~
とある媒体からの流入ユーザーがどの程度コンバージョンにつながっているのか。それを計測する指標として最も代表的なのがコンバージョン率です。
※1 CVR(コンバージョン率) = コンバージョン数 / クリック数
※1 コンバージョンレート(ConVersion Rate)
しかし、コンバージョン率はあくまでも割合の計算に過ぎないので、この指標にばかり固執していると判断を見誤る場合があります。
例えば、コンバージョン率が1%の広告Aと、コンバージョン率10%の広告Bがあったとします。
これだけ見れば広告Bの方が圧倒的に優秀な広告に見えますが、果たして本当にそうでしょうか。
売上貢献度の数値の出し方~CPA編~
ここで、もうひとつ、指標を加えてみます。
それは、その広告を出稿するのにかかったコスト。
先の例で出した広告Aと広告Bは、広告Bの方が接触してからのコンバージョン率でみると10倍効率的なのですが、広告Bの方が広告出稿にかかるコストが30倍違うとしたらどうでしょうか。
この時点で、1件のコンバージョンを獲得するためのコストは、広告Aの方が優れているということになります。
※2 CPA(獲得単価) = 広告出稿にかけたコスト / 獲得(CV)数
※2 獲得単価(Cost Per Acquisition/Action)
もちろん、コストをかけてもいいから認知を上げたい、見込み客を増やしたいという目的で広告を出稿する場合は、広告Bも検討に入れておきたいですが、広告にかかるコストをできる限り安くしたい、削減したいと考えているときに、コンバージョン率だけを頼りに広告Bを出稿していると、思わぬロスにつながります。
顧客の傾向から集客ニーズのある媒体とその商品を分析!

そもそも、先に例に挙げたような広告Aと広告Bのような、パフォーマンスの違いが何故起こるのでしょうか。
様々な事由が考えられますが、代表的な例をひとつ挙げるとしたら、広告が目に触れるユーザーの属性が違うということが挙げられます。
例えば、広告で誘導したいサイトが、化粧品を扱っているサイトだとしましょう。
このサイトに広告を利用して誘導する場合、出稿先の媒体が、一方は化粧品のクチコミサイトに広告を出稿していた、もう一方では男性向けのビジネス情報を扱うサイトに広告を出稿していたというケースを想像してみれば、どちらの広告がコンバージョンを取りやすいかも容易に想像することができることでしょう。
とはいえ、実際には、化粧品のサイトへ化粧品のクチコミサイトから集客するなんていうドンピシャのシチュエーションはそうそうあるものではなく、化粧品を欲しがるユーザーが集まるサイトは、どのようなサイトであるかをある程度アタリをつけて広告を出稿する必要があります。
広告は出稿後が重要!PDCAを回した効率的な効果測定
広告の出稿先は、これまでの経験から出稿するべきサイトを判断することも重要なのですが、それよりも重要なのが、広告を出稿したあとの効果測定だと考えてください。いくら過去に実績があったサイトだとしても、時期的要因や、今回売り出す商品、訴求の内容などで、いくらでも広告の効率というものは変わります。
大きなキャンペーンであればあるほど、どの広告が売上に貢献しているのか、コンバージョンあたりのコストがどの程度なのかを比較検討し、必要であれば訴求内容の差し替え、アピールする商品の変更などを行い、スピーディにPDCAサイクルを回すことが求められます。
これまで全然売上に貢献してくれなかったような媒体でも、媒体に集まるユーザーがどのようなユーザーかを仮説を立て、それに沿って訴求を変更することで、一気に効率が良くなるというケースは往々にしてあります。
このことは、特定のサイトに広告を出稿する場合(一般的に純広告と呼ばれます)のみではなく、キーワードやユーザー属性に対して広告を出稿するリスティング広告やディスプレイ広告の世界でも重要な考え方です。
コンバージョン率が非常に良いキーワードがあったとして、そのキーワードはほとんどユーザーに検索されなかったり、1クリックあたりのコストがあまりにも高かったりという場合は、手放しで優秀なキーワードだと判断できず、もう少し総合的に判断する必要が出てきます。
ディスプレイ広告における属性ターゲティングについても、同様のことが言えます。
算出した売上貢献度の分析で効率的な営業へ
ここまで、コンバージョン率とコンバージョン単価を売上アップの効率化の指標として挙げてきましたが、効率的な影響活動という側面から、さらに参考になる指標をご紹介させていただきます。
それは、問い合わせや資料請求からの商談成立率。また、商談成立からの成約率も是非モニタリングしておきたいところです。
アポ取りや商談に関しては、オフラインで行われることなので、そこからはWebでのプロモーションは関係ないのではと思われがちなのですが、実際に数値を集計してみると、広告ごとにまったく数値が変わってくることに気付かれると思います。
この理由こそ、先に挙げた「属性の違い」によるものなのです。
広告を出稿する媒体によっては、かなり購買意欲が低いものの、アクセスが非常に集まる、知名度が非常に高いなどの理由で、やたら問い合わせや資料請求が集まる媒体があります。
特に、問い合わせや資料請求と引き換えに何か特典を付与するようなキャンペーンを打っているときは、こうした状況が起こりやすいと考えられます。
こうしたルートで集まってきたユーザーにアポ取りや商談を行っても、なしのつぶてになる可能性は高いと言えるでしょう。
ただし、属性さえ合っていれば、キャンペーンによって背中を押された購買意欲が高いユーザーという理想的なユーザーを効率的に集客することも可能です。
こうした広告媒体を効果計測によって確実に把握し、次に活かすことこそが、効率的な営業への第一歩といえるでしょう。
広告媒体の評価については、多分こうだろうという思い込みのみで判断するのは危険です。もちろん、最初に予想を立てておくことが重要ですが、それに対して効果測定をするのを忘れないようにしてください。
そして、効果測定の結果、予想が外れていたのであれば、どうして予想が外れたのかを仮説立て、それに沿って改善を行い、さらに効果測定を行うことが重要です。
コンバージョン率もコンバージョン単価も商談成立率も成約率も、この繰り返しがあってはじめて意味が出てくる指標であることを忘れないようにしましょう。