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失敗しない通販のツボ ~指標で学ぶ事業計画の重要性~

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.10〉

みなさんが通販事業を開始するにあたり、開始前に準備・理解しなければならない項目の中でとても重要なもののひとつに、『KPI』という指標があります。今回は、このKPIについて詳しく触れてみたいと思います。いくつか数字による説明もありますが、大切なのはその構造ですので、最後までおつきあいいただければ幸いです。

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重要な指標『KPI』とは

KPIとはKey Performance Indicatorの略称で、「重要業務評価指標」と言われています。通信販売に限らず広くマーケティングや営業の現場で使われる用語で、要するに「事業を進めていくために必要で、重要な評価指標」のことです。

併せて使われるKGIはKey Goal Indicatorの略称で、「重要目標達成指標」です。通信販売事業では、KGIは最終的な目標である売上額や利益額等のこと、KPIはその過程における新規顧客獲得人数、CPO、リピート人数、LTV等というように、「KGIを達成するためのプロセス」を管理するためにKPIが存在しています。

通信販売に限らず、マーケティングの現場ではこのような英単語の頭文字をとった略称を活用することが多く、経験がなかったり、他業種から通販事業を立ち上げる場合等は、最初はとっつきにくいように感じるかもしれません。しかし、非常に重要な指標なので、事業を稼働させる前にしっかりと理解して活用できるようにしておきましょう。
●関連記事/「ゴルフコンペでKGI・KPI そしてKSF

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通信販売事業におけるふたつの重要なKPI

通信販売事業におけるKPIにはさまざまなものがありますが、事業計画をつくり事業を展開していくためにもっとも重要なものをあげるならば、新規顧客の獲得を評価する『CPO』と、顧客のリピートを評価する『LTV』ではないでしょうか。

ちなみに、ネットマーケティングの拡大に伴い、新規顧客獲得はアクイジション(Acquisition)、リピートはリテンション(Retention)といったように英語での呼び方が増えてきていますが、英単語の頭文字の略語や聞きなれない専門用語は年配の方や他業種から参入する際に難しく感じる要因のひとつになっているのではないかと思います。

さて、CPOはCost Per Orderの略称で、類似指標にCPR(Cost Per Response)やCPA(Cost Per Acquisition または Action)等がありますが、どれも用途は同じく、新規顧客獲得効率を評価するための指標です。
CPOは、直訳すると「注文1件にかかる費用」ですが、通信販売事業では「新規顧客1人獲得にかかる費用」として捉えるのが一般的で、数値が小さい方がより効果的ということになります。計算式は、「CPO=新規顧客獲得費用/新規顧客獲得人数」です。

例えば、100万円の広告(Cost)を使って、これまで購入履歴のない新規の商品購入者100人が商品注文(Order)したとすると、「100万円/100人=1万円」。つまり、CPOは1万円となります。同様のケースで商品注文者が50人だと、「100万円/50人=CPO:2万円」となり、前述の1万円の方が「効率が2倍よい」という評価になります。
この「数値が低い方がよい」という使い方も、少し慣れが必要かもしれません。また、前述の通りCPRやCPAといった類似した指標も存在していますが、意味合いが微妙に異なることや、通販企業での新規顧客獲得方法によって使い分けられていたりしますので、厳密な言葉の意味にこだわるよりも、どのような手法で新規顧客獲得を行い、それに対してどの指標を使うかというルールを最初につくっておくことが重要です。

また、他社事例等を参照する場合、企業によって使う指標やその定義が異なることがあるので注意が必要です。例えば、CPAをCost Per Actionとし、注文以外の問い合わせも含めて計算する場合もありますが、Cost Per Acquisition としてCPOと同じように新規顧客の注文で計算するという使い方をしている企業もあります。さらには、安価なお試しセットや初回限定の割引価格での注文は顧客化する前の見込み客と定義し、それらは注文(Order)ではなく反応(Response)としてCPRを計算し、そこから通常価格での商品や定期購入への引き上げ(Conversion:コンヴァージョン)を経てCPOを導く場合もあります。

このように、英語の頭文字の略語がたくさん出てくるとそれだけで難しいように感じるかもしれませんが、要するに新規顧客獲得にいくらかかったか(CPO)、そしてその獲得した顧客がどれくらい繰り返し購入:リピートするか(LTV)、という大きな2区分で計画の土台が設計できるので、通信販売事業の構造自体は実はシンプルと言えます。

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新規顧客獲得のKPI:CPO

リピート型通信販売事業では、事業計画をつくり事業展開する際に重要なKPIには、大きく分けて新規顧客獲得を評価するCPOと、リピートを評価するLTVがあると述べましたが、それぞれをもう少し掘り下げていきましょう。

CPOには、それに関連した把握すべき指標・数値がいくつかあります。使い方や定義は企業によって異なるので、ここではCPR=見込み客獲得指標(お試しセットや初回限定商品等訴求による見込み客の購入)、CPO=新規顧客獲得指標(通常商品の購入)、CVR=見込み客から通常商品購入への引上げ率とします。

通販の現状から考えると、インターネットとテレビ以外のマス媒体広告では通常価格での訴求よりも、いったん見込み客を獲得した後に顧客に引き上げる2ステップ手法が一般的となっています。とくに、健康食品や化粧品を販売する多くの企業がこの手法で展開しているようです。
そうなってきたのにはさまざまな理由がありますが、やはり通販広告増加による過当競争の激化や、実物を見ることができない商品を限られた紙面の情報だけで差別化し購入してもらうことの根本的な難しさ等が考えられます。さらに、知名度が低い企業の商品であれば、ハードルはさらに高くなります。そのような背景から、よりCPOを改善するために、購入しやすいお試しセットや初回限定割引商品で見込み客を獲得し、その後に引上げ販促を行う2ステップ手法に移行してきたのだと思います。

遠回りに感じますが、1ステップと2ステップを比較テストすると、最終的なCPOは2ステップの方がよい結果が出ることが多いようです。しかし、お試しセットや価格を大幅に割り引くと媒体広告での反応:CPRは効率がよくなりますが、その代償として引上げ率:CVRが悪くなる傾向があります。
CPRとCVRは例えるなら、こちらが改善すればあちらが悪化し、こちらが悪化すればあちらが改善するシーソーのような関係です。そこで、お試しセットや割引商品購入の見込み客を正規顧客に引き上げる販促を管理する指標としてCVRが必要となり、2ステップでの新規顧客獲得ではCPOに至る副指標としてCPRとCVRが存在するのです。

1ステップでの新規顧客獲得(商品訴求)

媒体費用:100万円、 新規商品購入者:20人
  ⇒100万円 / 20人 = CPO:5万円

2ステップでの新規顧客獲得(お試しセット訴求 → 商品訴求(引き上げ))

媒体費用:100万円、 新規お試しセット購入者:200人、 引上げ率(CVR):20%
 ⇒100万円 / 200人 = CPR:5千円
  CPR:5千円 / CV:20% = CPO:2.5万円

  

ただし、2ステップは引き上げにもコストがかかるので、実際はそれらを加算して計算する必要があります。そうすると意外にコストがかかるのがわかりますが、それでもマス媒体で直接商品を定価で訴求する1ステップよりも効率がよくなるケースが多いというのが現状といえます。

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リピートのKPI:LTV

  

顧客のリピートもさまざまな視点で計測する必要がありますが、最重要KPIはLTVです。というのも、新規顧客獲得時点では利益が生まれにくい、もっと言うなら赤字になるのが一般的ですので、それをいかに回収して利益構造に持っていくかを担っているのがリピート指標:LTVなのです。通販事業を車に例えるなら、CPOとLTVは両輪と言えるでしょう。

  

さて、LTVとはLife Time Valueの頭文字をとったマーケティング用語です。日本語にすると「顧客の生涯価値」となり、自社で商品を購入した方が生涯でどれだけ価値(売上・利益)をもたらすかということを数値化した指標です。
しかし、実際の現場では言葉通りの「生涯」ではなく、月・年単位で顧客のリピート:再購入を把握し、事業計画策定に必要な期間で区切って数値を算出します。また、この数値は新規顧客獲得販促のCPRやCPOを設定するのに必要となります。

LTVの算出式はいくつかありますが、「LTV=平均購入単価×平均購入回数」がわかりやすいと思います。これを、必要な期間で区切って計算します。例えば、平均購入単価が5千円で、新規顧客の最初の1年間の平均購入回数が4回だとすると、「5千円×4回=LTV:2万円(1年間)」になります。これに粗利率をかけると、損益分岐するCPOを算出することができます。

なお実際の事業計画策定時には、CPOの説明で述べたのと同様、LTVを算出する際にリピート促進販促の費用を加味しなければなりません。これらは、あくまでも指標の意味や新規顧客獲得とリピートの関係、通販事業の基本的な構造を理解するための簡略化した説明ですので、ご注意ください。

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最後に

事業計画の作成や事業を展開していく上で、もっとも重要といえる2つのKPI、『CPO』と『LTV』。これらは単に集計が必要な指標と言うだけでなく、リピート型通販事業の構造と直結しているので、この2つをしっかりと理解し把握しておくことが事業成功の最低条件なのです。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

コミュニケーションプランニングセンター ビジネス開発部 

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
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