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通販/ダイレクト

将来を見据えた事業展開は「LTV強化」に注力を、「顧客主義」が大事な顧客リピート対策~黒字化以降の戦略と課題④

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.39〉

その後の成否を分かつ、黒字化以降のリピート強化

通販事業の販促の両輪は、「新規顧客獲得」と「顧客リピート」です。この2つの要素で事業をコントロールするのですから、非常にシンプルな構造と言えます。しかし、数値化されたシンプルでデジタル的な構造をうまく活用し、事業の成長につなげていくには、「人と人(事業社スタッフと顧客)」というアナログな側面を理解しなければ顧客とのよい関係をつくることは難しいのです。

前回までは、通販事業を立ち上げて最初の、そして大きな第一ステップである黒字化段階の、新規顧客獲得について説明してきましたが、今回からは顧客リピートについて説明していきたいと思います。黒字化以降のリピート強化は、その後の成否を分かつと言っても過言ではありません。少しでも問題発見や改善の糸口になれば幸いです。

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通販事業で大切な「顧客主義」

「通信販売」と「ダイレクトマーケティング」は、厳密には異なります。通販事業のモデルによっては、商品の受注、発送、代金回収などのフルフィルメント部分を遠隔で行いますが、販促等はBtoBtoCのように間に第三者を介して、エンドユーザーとの直接コミュニケーションを取らない形態もあります。このような場合は、通信販売という手法を用いてはいますが、ダイレクトマーケティングではないビジネスモデルです。対して、独自性の高い商材を扱っている事業社は情報や販促の受発信を直接顧客とやりとりするBtoC、つまりダイレクトマーケティングを選択するケースが多いように思います。

これらはどれが優れているかというのではなく、扱う商品や事業社の特性、事業を進めるにあたっての戦略やリソースなどによって、より強みが発揮できるものを選択すればよいですし、もちろん組み合わせて活用することで、より効果的に事業を進めることができます。どちらにしても、従来の流通経由の販売形態に比べて通販事業はエンドユーザーとの距離は近くなりますので、「顧客主義」という考え方は重要視しなければなりません。つまり、顧客と直接やりとりを行うダイレクトマーケティングは、顧客主義の重要度を高くしなければ事業は成功しないということなのです。そして、黒字化以降はとくに顧客リピートの強化をしなければならないので、改めて顧客主義の重要性を考えるよい機会として気をつけていくべきではないでしょうか。

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顧客中心の事業展開とは?

「顧客のために」という言葉は精神論的に聞こえるかもしれませんが、この考え方を事業展開の中心に置き、PDCAに組み込んでいるかどうかは、販促ツールや会議内容等をチェックすれば客観的に評価できます。要するに、形が見えにくい精神論として捉えるのではなく、具体化されたものを客観的に確認できる通販事業の機能のひとつとして扱うことができるということです。通販事業はKPIや販促手法等のシステムやテクニックがクローズアップされがちですが、それらを駆使したさまざまな施策の中心に顧客の存在を置いて作案しなければ、マイナス面もダイレクトに伝わるという大きなリスクがあります。

顧客主義は通販事業の成否を分かつ最重要要素であり、とくに顧客リピート:LTV対策には必要不可欠なので、リーダーは常に意識し高いレベルで活性できている状態にマネジメントしなければなりません。誤解があるといけないので補足しておきますが、新規顧客獲得に顧客主義の必要性が低いというわけではありません。新規顧客獲得に活用するよりも、DMやテレマーケティングの方が顧客に対するマインドが強く出やすいということですので、スタッフの業務配置の際等には留意したほうがよいポイントとして理解してください。

また、顧客主義や組織に対する帰属意識、愛社精神等はスタッフ一人ひとりの資質や個性に任せるだけでなく、重要な機能として捉えて、その役割を担うリーダーがコントロールし活性化すべきことです。これらの言葉には、いまの時代背景も影響してか少し気恥ずかしく感じる方も少なくないかもしれません。しかし、事業を成功させるための不可欠な要素なので、精神論ではなく事業戦略の機能の骨子として捉えて、スタッフの育成・強化につなげていただきたいと思います。

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顧客リピート:LTVと顧客主義

顧客リピート:LTVとは、文字通り「顧客に繰り返し購入してもらうこと」です。LTVはLife Time Value=生涯価値のことですが、通販事業では必要に応じた期間で数値化して顧客リピートに役立てていくための指標です。顧客が初めて商品を購入し、それが2回めの購入、3回めの購入と継続していきます。なかには途中で購入がストップする方、あるいは異なる商品を購入する方等、さまざまな購買パターンがありますが、顧客の継続購買のための導線をどのように設計するかが顧客リピート対策の土台です。そして、この導線を設計するために必要な指針が、前段で述べた顧客主義になります。顧客情報を収集、把握して、それに対して自社の商品や企業特性を重ね、どのような販促やコミュニケーションが顧客との関係性を高めていけるかを検討して設計しなければ、顧客離れにつながることになります。

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顧客主義不全で見られる傾向

通販事業で顧客販促を検討する際に、RFM分析という手法がよく活用されます。これは通販事業を行う上で必要な分析方法のひとつですが、改めて説明するとR=Recency(最終購入日)、F=Frequency(回数)、M=Monetary(金額)という3つの指標をレベル設定して、顧客の分布を可視化するための分析手法です。3項目あるので、2次元だとR×F、R×M、F×Mの3種類の視点で顧客状態を見ることができ、顧客のランク設定に活用することもあります。DM等の販促を行うときには、このRFM分析でターゲットやボリュームを検討(セグメンテーション)することは一般的ですが、顧客主義が機能していない組織だと完全に数値の群としか捉えることができなくなってしまいます。

活性度が低い対象に対してはレスポンス向上のためにオファーを強くし、反応率がよい対象に対しては金額アップのために高額商品を訴求する、というような議論が会議で行われます。この議論のどこに問題があるのでしょうか。オファーを強化するとか商材を変えるといった対策自体は問題ではないのですが、数値のみで状態を捉えるのではなく、顧客が必要としているものが何か、提供すべき情報は何か、購入が止まっている原因は何で、何が不足しているのか、というような、どちらかというと定性的な部分を検討すべきなのです。しかし、顧客に対する重要度が活性化していない組織では、前述したような数値のみを捉えてしまい、目先の対策検討になる傾向があるようです。1回ごとの販促は大切ではあるものの、その次にもつながっていくことを考えると顧客視点で考えざるを得ないはずなのですが、顧客に繰り返し購入してもらうリピート販促をやっているつもりが、しだいに顧客が見えなくなり、単発の施策になってしまうので注意が必要です。CPOを使った新規顧客獲得もそうですが、数値データを活用した機能的な手法に潜む落とし穴とも言えます。

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今回は、非常に重要かつ多くの事業社が見落としてしまいがちな点をピックアップして、注意喚起も含めた内容にしてみました。通販事業展開の多くの場面で数値を参照しながら議論すること自体は問題ではなく、むしろ機能的で、少数の発言力の強いスタッフの主観に流されにくいという利点もあるのですが、同時に顧客を意識しにくくなり対策が単発的になりやすいというリスクもあります。黒字化以降はCPOが悪化する傾向になりやすいことも含め、改めて顧客志向を考え直すよいタイミングではないでしょうか。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

ダイレクトビジネスプロデュース室

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■上級WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
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