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通販/ダイレクト

想定ケースと注意点で学ぶ、「新規顧客獲得の厳しさ、こう乗り切れば大丈夫!」~黒字化以降の戦略と課題②

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.37〉

黒字化以降も厳しい!? 新規顧客獲得の現状

前回の記事では、黒字化以降の新規顧客獲得における「想定ケース1:紙媒体主展開=■傾向1:惰性で出稿を継続」を説明しました。黒字化以降の展開としては、これは多く目にする一番危険な想定ケースと言えます。通販事業に参入し苦労を重ねてやっと達成した黒字体制を、その後の事業成長にとって重要な「転機」として捉えることができない残念なケースなので、現場担当者のみでなく経営層も注意してください。
それでは今回も前回から引き続き、新規顧客獲得に関わるテーマに関していくつかのパターンを想定し、注意点や方向性等、参考となるような話をします。

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想定ケース1:紙媒体主展開

傾向2:拡張しながら余地を見極め

紙媒体を新規獲得のメイン媒体として、継続的に進めていく戦略です。前回説明した「傾向1:惰性で出稿を継続」との違いは、ある程度議論したうえでこのような方向性を選択したという点です。しかし、十分議論したうえでの戦略であっても、結局は「傾向1:惰性で出稿を継続」と同じような対策になることが多いようです。

ここでの着眼点は、「黒字化した時の売上規模・顧客数等の状況」です。たとえば、「利益率が高い」「CPOが低い」「LTVが高い」というような利益を得やすい商品に好結果が重なれば、売上規模が小さい段階で黒字化できますが、逆(利益率が低い、CPOが高い、LTVが低い)だと、ある程度の売上規模に達しなければ黒字化しにくくなります。これを新規顧客獲得の現場に当てはめると、前者はまだ拡張余地がありますが、後者は前者に比べて出稿数は多くなるので、一通りの出稿枠の選別が終わっている、つまり拡張余地が少なくなります。そうなると、前者/後者の「より効率的・効果的な新規顧客獲得戦略」はまったく異なってきます。簡単に言うと、前者であれば引き続き紙媒体を拡張しながら事業成長戦略を立てることに可能性はありますが、後者の場合は早々に紙媒体以外への出稿を検討したほうがよいと言えます。ただし、前者であっても他媒体展開は遠からず進めなければならなくなるので、そこまで含めた戦略を描いておいたほうがよいでしょう。

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想定ケース2:テレビ媒体主展開

紙媒体展開をしない、あるいは少し試したが結果が思わしくなかったため、早い段階(黒字化前)にテレビ媒体で新規顧客獲得を行ったケースです。早い段階でのテレビ媒体展開は、ある程度の予算が必要であることに加え、ハイリスクハイリターンです。失敗すれば黒字化へのスピードが大きく減速されるので、議論を尽くし、メリットとデメリットを数値化したうえでの実施が必要です。自分たちが未経験であったり、専門性が高いようなプロモーションでも、あくまでも主体者=責任者として評価判断できる最低限の勉強は必要ではないでしょうか。

さまざまな経緯でテレビ媒体展開が良好で黒字化まで至った事業社は、引き続きテレビ媒体展開の継続に加え、それまで控えていた紙媒体の出稿も考えてみることをお勧めします。この記事ではWEB展開は除外していますが、テレビ媒体と紙媒体の連動はWEBへの流入を促進できる可能性が大きいからです。このような複数媒体での相関性を評価するようなプロモーションになると未経験者では難易度が高いので、外部協力会社との連携が重要になってきます。

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新規顧客獲得計画で重要な留意点とは

黒字化以降の新規顧客獲得の媒体戦略でよく見られる方向性を、いくつか提示してきました。しかし、実は最も重要なことは表面的な出稿媒体戦略ではありません。そこで、どのような新規顧客獲得計画=出稿計画を立てるにしても共通する注意すべきことを、以下2点あげます。

1:CPO至上主義でよいのか?

CPOは、通販=ダイレクトマーケティングを行ううえで最も重要な指標のひとつです。新規顧客獲得担当者は、この数値をいかに低減されるかに神経を削られ続けます。もちろん、この指標は低いほうが顧客獲得効率はよいのですが、低い数値のみをルーティン作業的に追い求め続けることには注意が必要と言えます。

前回と今回の記事でいくつかの出稿の方向性を説明しましたが、どのような計画を立てるにしても、またその時点で出稿実績が好調であったとしても、いずれはCPOの頭打ちは訪れます。クリエーティブのブラッシュアップ等さまざまなCPO改善策を駆使し続けていくのですが、その結果、目標値を達成できないという状況です。いかに順調な事業社でも、いずれはこのような状況に必ずなります。そのような状況になると、通販事業推進の現場はどのような状態になるのでしょうか。CPOが悪化して目標を下回ると、事業計画に対して大きなマイナス影響を及ぼすので、多くの場合焦って適した対策が打てなくなります。出稿すればCPO未達成で赤字がかさみ、出稿を減らせば予定していた売上が減ります。そして、CPO悪化の恐ろしいところは、当年度だけでなく次年度以降にも大きな影響を及ぼすことです。ピンとこない方は、数年間の事業計画を立ててシミュレーションをしてみれば一目瞭然です。売上=利益を上げていくために出稿量を増やしていきますが、出稿枠は無限ではなく、そのなかでさまざまな施策により実績改善を試みても、事業成長に必要な新規顧客獲得とそれを得るよい媒体出稿枠の需要と供給バランスのようなものが反転するようなイメージです。

根本対策としては、繰り返しになりますが、黒字化までの経験では考察しにくいリスクを検討した事業計画を立てることにつきます。さまざまな状況に対して具体的なポイントを示すことが難しいとは言え、共通することは2点です。
①出稿しないと判断した出稿枠への再出稿も考える、②リピートも含めた出稿可否を評価する。
つまり、流れ作業的な目標に対するCPO評価だけでなく、目標未達成で出稿しないデメリットと出稿するデメリットを比較評価するという意味です。これは、計画に必要な新規顧客獲得とそれを得るためのCPOのバランスが崩れるあたりからとくに重要になってくる考え方なので、頭の隅に置いておいてください。「バランス崩壊が訪れて、実際に出稿すればするほど計画が崩れる」というような状況に陥っている事業社の方も、それまでとは異なる評価方法で再計画することをお勧めします。CPOは低ければ低いほどよいですが、機械的に数値の大小だけを評価するような考え方では対応できなくなる時がくるので、事前に想定しておくとよいでしょう。

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2:リピート=LTVの重要性を把握しているか?対策は十分か?

CPOとLTV。顧客リピート型通販の仕組みの両輪とも言えるのが、この2つの指標です。ほとんどの事業社はCPOの方を重視しがちで大きな予算を投じ、スタッフを配置して、会議の時間等の多くのリソースを投入していますが、LTV対策への注力が少ないと感じることがあります。打ち合わせ等を行うと、頭ではLTVの重要性を理解しているのですが、実際には重要度にあったスタッフィングやPDCAになっていないこともあります。

原因は大きく2つ。ひとつは、通販ビジネスが比較的わかりやすいKPIで運用できるのでシステマチックである反面、作業化しやすいという点。そうなると、本来知恵を絞り常に新たな施策を考えるべき人たちが、チャレンジをしなくなっていきます。もうひとつは、とくに健康食品や化粧品の通販でよく見られる、定期的にお届けする制度。この制度に顧客を加入してもらうことには心血を注ぎますが、加入後のフォローや顧客分析がしっかりとできていない事業社も見受けられます。

CPOとLTVは連結しているので、強い相関関係にあります。ですので、CPO単独ではなくLTVを連結させた評価方法と改善策が、黒字化以降の段階ではより重要になってくると思います。
次回以降も引き続き、黒字化以降の戦略と課題について、お話しさせていただきます。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

ダイレクトビジネスプロデュース室

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■上級WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
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