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通販/ダイレクト

新規顧客獲得は足かせ!? 事業をより成長させていくためのケース別傾向と対策!~黒字化以降の戦略と課題①

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.36〉

ひとつの節目・事業が黒字化して以降の展開について

これまで、事業立ち上げから黒字化を達成するまでを想定して説明をしてきました。通販ビジネスは、●新規顧客獲得とリピートで売上と利益をつくっていく、●システム化しやすい特徴があるが故に同じことの繰り返し・作業化しやすくなる、という傾向があります。その傾向に任せて事業がうまく成長していくのであれば問題はないのですが、そう甘くないのが実情です。
今回以降は、通販という事業を立ち上げてのひとつの節目、多くの事業社が第一目標として設定する「黒字化達成以降」をイメージしていきます。新規顧客獲得、リピート等、一度説明したテーマを再度取扱うこともありますが、状況を照らし合わせて参考にしてもらえれば幸いです。

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<新規顧客獲得:アクイジション(Acquisition)>という足かせ

通販市場は、いまや「物販のほぼすべて」と言っても過言ではない商材が対象になり、そして通販事業に積極的ではなかった大手やメーカー系企業まで参入している状況です。通信販売自体に不安に感じる方も少なくなかった20~30年ほど前と比べると、大きく様変わりしました。そのような拡大と多様化の中、主に新規顧客獲得とリピートで構成されているビジネスモデルが通販事業の多数派と言えるのではないでしょうか。

役割や重要度の違いはありますが、利益の多くをリピートで得ているような事業社にとって、新規顧客獲得販促は重要ではありますが「足かせ・重荷」というような先行投資として捉えられているように感じます。新しい顧客を獲得した段階では利益が出ないだけでなく、少なくない赤字を積み重ねていかなければならないからです。

たとえば、売価5,000円の商品があり、粗利率70%、CPO20,000円とすると、新規顧客1人獲得で16,500円の赤字、毎月1,000人、年間で12,000人の新規顧客獲得で約2億円/年の赤字という計算になります(ただし、年度内にリピートがあるので、実際にはもっと少なくなります)。これくらいのインパクトになると、経営的にもリスクを高く見積もらなければならず、直接事業に関わっていない経営層も新規顧客獲得のプロモーションや予算に対して敏感になるのは当然と言えるでしょう。ですから、事業が黒字化した以降の展開では、現場の推進スタッフ以外の経営層も巻き込んで、より事業を成長させていくために一丸となる必要があります。

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黒字化したら何が変わるのか?

では、その新規顧客獲得ですが、黒字化したからといって目の前で何か新しい現象が起こるわけではありません。変わるのは事業社内の通販事業に対するとらえ方と、現場担当者の戦略・戦術です。過去の記事でも記述しましたが、それまで赤字だった事業が黒字化すると、経営層からの注目が一気に高まります。これ自体は悪いことではなく、むしろよい方向づけをしていく契機にもなるのですが、意識して社内調整や情報発信をしないと、現場との軋轢を生む原因になることも起こり得ます。それに経営層が直接関わっている場合はその限りではないものの、事業社の事業が通販事業のみだと、比較的高確率で起こりうることなので注意が必要です。
以下、実例をもとにした状況を想定して解説していきます。

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想定ケース1:紙媒体主展開

新規顧客獲得は、一定期間赤字として積み重なっていきます。潤沢な資金と盤石な経営基盤があり、赤字などまったく問題ないというような稀なケースは別として、多くの事業社ができるだけ赤字リスクを抑えながら出稿をしていきたいと考えるのは当たり前でしょう。1出稿あたりの単価が低く比較的レスポンスがよい媒体と枠であること、そして制作や出稿プランニングするスキルが低くてもサポートを受けながら展開しやすい媒体であることから、紙媒体を当面の出稿媒体として選定する、というような想定ケースです。

このような場合、目標以上の出稿枠は継続出稿し、未達成枠は控えていくというようなPDCAを展開していきます。一概には言えませんが、黒字化した時点では、ある程度「よい枠」「悪い枠」の選別が終わっている事業社が多いのではないでしょうか。
このケースの黒字化以降の新規顧客獲得には、大きく2つの方向性があります。ひとつめは、従来通り紙媒体を主としながら、より高い目標設定をして出稿をしていく方向性です。

傾向1:惰性で出稿を継続

とくに戦略的な方向づけをするのではなく、これまで同様に、少しきつい言い方をすると惰性で出稿をしていく傾向です。事業計画をきちんと立てて、出稿ボリュームや目標値が最適なのであれば問題ありませんが、それまでの延長線上で進めていくケースは意外と少なくないのです。

このケースの事業社の多くは、黒字化までの期間で一通りの出稿を行い、目標に照らし合わせて「よい枠=出稿可能媒体」「悪い枠=出稿不可能媒体」がある程度区分けされています。そのような状況の中、継続して出稿を行い、実績向上をしていくには、①コスト交渉、②クリエイティブ強化、③優良枠の出稿頻度を増やす、といった対策案が挙げられます。しかし、このような対策ではかなりの確率で実績が低下していくため、計画通りの出稿ができなくなります。もちろん、対策が功を奏して良好な出稿を続けていく事業社もいますが、それは少数派ではないかと思います。その理由は次の通りです。

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理由①「コスト交渉」

経験のある広告会社は、通販事業社にとって新規顧客獲得がどれほどハイリスクかをよく理解しています。しっかりと連携してチーム体制を整えれば、広告会社側も媒体社と最大限の交渉を行い、できるだけコスト交渉を実施します。そのチーム体制を構築せず、現実的に無理なコストを計画として組み込んでしまった場合、その価格での買いつけが実現できずに、計画が未達となります。コスト交渉自体は行うべきことですので、現実的な協議を心がけてください。

理由②「クリエイティブ強化」

よりレスポンスのよいクリエーティブ制作や修正(ブラッシュアップ)は、日常的に行っていくべきことです。黒字化までのクリエーティブ制作をまじめに行っていれば、他社の多くの広告事例等を参考にしたレスポンスに結びつきやすいと思われる要素は一通り試しているはずです。一方でクリエーティブは、成功方程式に当てはまらない結果が出ることも少なくありません。なので、日常的に強化の取り組みを行いながら、トライアル&エラーを行うことが望ましいです。

理由③「優良枠の出稿頻度を多くする」

これはとくに注意が必要で、思いがけないくらい大幅に実績が低下するケースを目にしてきました。通販事業の推進現場は数値に振り回されやすいのですが、その数値を機械的に扱うのはよくありません。数値の向こうには、実際に生活している人たちがいるからです。レスポンスはデジタル化された数値で表されますが、実際にはアナログ要素が強い「人の購買行動」であることを意識してください。

今回は、黒字化以降の新規顧客獲得における「想定ケース1:紙媒体主展開」の途中まで説明しました。次回以降も引き続き、新規顧客獲得に関わるテーマを予定しています。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

ダイレクトビジネス推進室

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■上級WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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