エリアシ

通販/ダイレクト

現場はスタッフに任せっきり!? その通販事業は赤信号!~実例で学ぶ、組織体制の重要ポイント~

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.21〉

黒字化達成、次に押さえておきたいのは組織体制

今回も、前回の記事から引き続き、通販事業の最初の壁と言える「黒字化達成」までの注意点がテーマです。
通販事業を立ち上げて最初のステージであり、同時にハードルとも言える黒字化までに特に注意してもらいたいこととして、「①スタッフの育成・スキル向上」「②組織体制の整備・強化」「③取引先の充実」の3点を挙げました。①は前回説明しましたので、今回は②を例に当てはめて説明していきます。
通販事業の未経験者にもなるべくイメージしてもらいやすいように、前回に示した下の2例をケーススタディとして、組織体制の整備・強化のための重要ポイントを解説していきましょう。

image01

[事例]企業紹介

A社:
これまで化粧品を扱う通販以外の事業を行っており、業績は好調。通販市場の可能性を期待して、これまで扱っていた化粧品で通販に参入。少なめのアイテム構成で展開する。スタッフは少人数で、独自性と機能性が高い商品をテレビ媒体で展開して、大幅な売り上げ拡大に成功。
B社:
これまでは流通系で卸~店舗委託販売(BtoBtoC)を行っていたが、新たなチャネル開拓として通販事業に参入。健康食品、化粧品、食品等、多くのアイテムを扱う。スタッフは少人数で、これまでの業務と兼任で推進。5年以上経過し、ようやく黒字化が達成できる状況に。企業イメージはよく、知名度は高い。

※この2例は、実例をもとに、説明しやすいように少し脚色しています。

image02

せっかく手に入れた大きなチャンスを逃したA社の場合

A社は、独自性の高い商品特長を活かして非常によい事業スタートができ、早期に黒字化を達成して、さらなる売上拡大を狙える状態になりました。ここまでは非常に好調です。しかし、必ず訪れる「CPO」の悪化に対して、現場のスタッフが対策できるだけの知識の習得、経験の蓄積・スキルアップができていなかったため、売上のカーブは鈍化してきます。

まだこの段階であれば、少し時間はかかりますが体制を立て直して回復させる方法はあったのですが、A社では有効な対策を実施できないまま事業は急激に悪化して、売上減少だけに留まらず、赤字転換してしまいました。なぜここまで、ある意味見事に失速低迷してしまったのでしょうか。

A社の場合、「①スタッフの育成・スキル向上」が不足しているところに、「②組織体制の整備・強化」不足が加わったのが致命的とも言えます。よくあるパターンとして、経営層は業績が好調な時には現場に任せっきりであまり口出ししませんが、低迷してくると途端にうるさくなりがちです。しかし、いままで放任してきたので、具体的な問題点の指摘や対策の提示にはならず、「なんとかしろ」という曖昧な指示にとどまってしまいます。

そのような現場と組織体制のもとでは、直面するCPOの悪化に対して適切に対処できるはずがありません。現場にはそれを解決できる経験を積んだスタッフがいないのでどうすることもできず、A社ではさらにこの時、追い打ちをかけるように現場のキーマンが退職することになってしまいました。

幸運ともいえる事業の成長チャンスを活かすには、経営層は現場をしっかりと把握できる体制をつくり、状況の変化に的確に対応できるスタッフの育成と組織の拡充を行うべきでした。

image03

今後非常に大きなリスクを背負ったB社の場合

B社は、黒字化までに5年以上の期間を費やしました。現場のスタッフはBtoB事業と兼任で通販事業も対応しており、通販事業計画の目標数値は根拠が乏しく、予算もほとんどない状態でした。このような事業推進でありながら、約5年で黒字化のラインが見えてきたというのは、悪くないと思います。

これは、販促が好調あるいは商品の特長がきちんと訴求できていたというよりも、商品ラインナップの多さに知名度とイメージのよさが加わった結果だと考えられます。そして、黒字化が見えてくると、「今後の会社の柱にすべき」と経営層から注目され、これまでよりも、かなり高い予算と目標を設定することになりました。
その結果、受動的に顧客を受け入れていた状態から、積極的に顧客獲得を行っていくという大きな転機となったのですが、「②組織体制の整備・強化」という観点ではここでどのような問題が生じたのでしょうか。

このB社も、A社同様に悪い意味で事業推進を現場に任せきりでした。先に結論的なことを言うと、「現場に任せきり」の状態は通販事業においては致命的ともいえるくらいハイリスクなので、事業の立ち上げ時点から、会社の中である程度の「力」があり、できれば経営層の近くにいるスタッフが関わっておくことを強くおすすめします。

数値でさまざまなことをコントロールするのが通販事業ですが、その数値の裏づけや仮説、メリットとデメリット・リスクの把握等をセットでとらえなければ事業を成長させていくことは困難です。そして、数値的な知識は書籍やセミナーで得られますが、スキルは地道にPDCAを展開しながら高めていかなければ身につきません。B社はこれらができていない状態でしたので、経営層が現場から上がってきたプランに対して「実現可能かどうか」「どの課題が事業目標達成のためのポイントで、その対策の難易度がどれくらいか」というような質的側面を評価することができなかったのです。

実際に、現場スタッフのつくった計画は、実現性が低いと言わざるを得ない内容でした。CPOやLTVの簡易な数値は把握していましたが、通販を立ち上げてからの数年間で得た顧客データをほとんど見ていなかったのです。実は、B社の通販売上は食品群が70%以上を占めていたのです。また、高い企業知名度と好感度により、リピート売上の食品構成比はさらに高いものでした。

このような顧客の現状を把握することなくつくられた今後の計画は、化粧品や健康食品で新規顧客獲得をし、リピートを見込んだものでした。自主的に購入してきたこれまでの顧客と、媒体広告で興味喚起から購入を促していく販促で獲得した顧客とでは、獲得のレスポンスもリピートも大きく異なり、前者の方が大きく優位となります。現状把握ができていなかったB社の現場担当者は、これから行う販促の質がこれまでと異なることをリスクと捉えられなかったのです。

そしてA社と同じく、B社の上司も現場担当者のみに任せきりで正確な状況把握をしておらず、マネジメント層は現場の計画を検証することができないまま、大幅に増やした予算のみが確定し、経験の少ない健康食品と化粧品のクリエーティブ制作や媒体選定が先行して進んでいるという非常に危険な状態に陥ってしまいました。

image04

結論:現場推進とマネジメント、組織体制にはふたつの観点が必要

A社・B社の両社とも、「①スタッフの育成・スキル向上」の不足が根本的な問題なのですが、そのような状況に陥らない、あるいは陥った時に改善策を打てるかどうかは、「②組織体制の整備・強化」にかかっています。つまり、現場進行のバックアップ的な役割が必要になるのです。

実例でも挙げた通り、「①スタッフの育成・スキル向上」に関しては、事業が好調に進んでいるように見えても、実際にはリスクを内在することが多いので、注意が必要です。だからこそ、「②組織体制の整備・強化」に関しては最低でも、それなりに力がある管理者が自ら知識を習得し、数値のみでなく実際の施策の仮説や検証結果を把握して参画することに尽きるといえます。

とくに、通販事業を新規事業として立ち上げ、BtoC の経験がない企業で、実例2社のようなパターンの組織体制の問題をよく耳にします。せっかく労力を費やして黒字化しても、まだまだ事業としては不安定ですので、立ち上げ時から組織としてきちんと体制を整備しておくことで、このようなリスクを減らすことができるのではないでしょうか。事業の「現場推進」と「マネジメント」の両面で、組織体制の整備・強化を検討することをおすすめします。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

コミュニケーションプランニングセンター

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

[ 関連記事 ]

入門書 通信販売事業の成功に向けて ダウンロードはこちらから

月刊

電通西日本のメールマガジン
セミナー情報や広告トレンドを配信!!メールサンプル

INTERVIEW

記事内容や電通西日本の事業内容にご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。 お問い合わせ