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真の「顧客主義」って? 顧客リピート対策、施策の実施以前に大切なこととは?~黒字化以降の戦略と課題⑤

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.40〉

リピート対策のポイントは「顧客とのよりよい関係性」

前回から、顧客リピート(LTV)対策についての記事内容になっています。
リピート対策は顧客とよりよい関係性を作っていくことに連動し、通信販売における最重要KPIのひとつであるLTVを高めていくためのプロモーションです。ここでの注意点は、顧客とよい関係をつくっていくこととLTV向上をまったく同じと捉えないことです。つまり短期的にはLTV向上が見込めなくても、顧客との関係性を高めていくために必要なコミュニケーションが存在することを理解することが重要です。

「費用対効果を計測できないことはする意味がない」という意見をよく耳にします。この考え方は多くの場面で重要視しなければならないことですが、顧客とのすべてのやりとりでの判断基準にはしない方がよいと考えます。もちろん予算管理と目標設定、成果計測はしなければなりません。CPOとLTV、ROI等だけで顧客とのコミュニケーションコストの必要性を評価しないようにしたほうがよい、という意味です。これについて、事例を参考にもう少し具体的に説明していきます。

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「挨拶状は必要でしょうか?レスポンスに効果はあるのでしょうか?」

事業社内の会議でこのような発言がありました。通販事業を立ち上げて数年、まだ黒字化していませんが、あと一歩というステージです。スタッフがCPOやLTV、ROI等の計算、評価にある程度慣れてきて、ルーティン的傾向が強いもののPDCAをしながら事業を運営している、という状況です。

この発言についてどのように感じるでしょうか。おそらく、必要性の有無に関する意見が別れると思います。それでは、なぜ意見が別れるのでしょうか。それは「顧客への挨拶にかかるコスト」を、売上・利益的視点で効果計測できないからです。挨拶の有無でABテストをして何らかの結果を持っている事業社もおられると思いますが、私は目にしたことがありません。私なりの最適解ですが、まず顧客主義や顧客満足を事業の方向性としているのであれば、「必要」だと考えます。その上で、かかる費用の低減策を検討すべきではないでしょうか。

たとえば、挨拶状という形状ではなく、キャンペーンチラシ等のツールに挨拶のスペースを設けて記載するという手もあります。日常生活に置き換えてみればわかりますが、長くよいおつき合いをしたい方に対して、会った時の挨拶の必要性の有無を考えている時点で、よい関係性を構築できるはずがありません。挨拶がレスポンスに対して有効かどうかの前に、顧客とよりよい関係性をつくっていくためにはどのような内容にしたらよいか、という考え方を持つべきだと思います。

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それは手段か目的か ―― 顧客がリピート購入するのに必要なことは?

インフラの充実によって急激に身近になった通信販売ですが、企業が行うさまざまな「リピート販促」は、多くの人が日常的に頻繁に目にするようになりました。一度以上購入した通販事業社から特別価格や購入プレゼント等の案内がDM(ダイレクトメール)や電話等で送られてくるのが、いわゆるリピート販促です。事業社の販促検討会議の現場でも、DMの回数や対象者、購入時の特典をどうするかという議論が主題になることが多いのではないでしょうか。

また、定期的な購入制度を導入している事業社では、顧客の制度加入、離脱防止が重要課題として検討されているでしょう。もちろん、買っていただくための仕掛けは重要です。しかし、これらの仕掛けは顧客が商品を購入する真の動機・目的ではありません。顧客が商品を購入する動機や目的とは、たとえばサプリメントであれば不足しがちな栄養素の補充や健康改善であり、化粧品であれば肌の悩みの解決や美に対する満足の向上です。もっと掘り下げれば、健康に不安があって行けなかった旅行に行ったり、人と会うのがいやだった同窓会への出席等となるでしょう。

お客さまが商品を購入するときには必ず目的があり、その目的は商品の機能性のみに限らず多種多様です。とくに、健康食品や化粧品はその傾向が強いように感じます。そして、繰り返し商品を購入していただくためには、お客さまが求めている目的に近い情報の受発信も行うというのが本質ではないでしょうか。そのうえで、購入を迷っている顧客の背中を押す仕掛けが、前述したような値引きや景品等のオファーであるべきだと考えます。

数値によって管理する傾向になりがちな通販事業は、事業社が思っている以上にシステマチックになり、自分たちが購入者側であれば当然のように持ちうる感覚も見過ごしてしまいがちです。より顧客に近い感覚でコミュニケーションを考えていくと、一見、商品とかけ離れているように感じる情報も必要だと気づきます。厳しく数値でも効果測定を行いながら、測定しにくい定性的な側面を組み合わせていくところに、BtoCの難しさでもあり楽しさのようなものがあるようにも思います。

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スタッフの育成と顧客視点の大切さ

エンドユーザーと直接接点を持ち、多様なコミュニケーションができることは通販事業の最大の利点ですが、大きなリスクも含みます。顧客に対する事業社の姿勢がダイレクトに伝わってしまうからです。顧客側の視点で考えると非常にわかりやすいのですが、たとえばつくりたい料理があって食材選びに悩みながら食材屋に行った時に、料理に関するアドバイスをしてくれず、「たくさん買うと安いよ!これを買うとプレゼントをあげるよ!」とまくし立てられるとどうでしょうか。安さとプレゼント欲しさに購入してしまう方ももちろんいるでしょうが、この顧客のニーズに沿っているとは言い難いです。

このような感覚は、スタッフの感性やセンスに拠るところが大きいと思います。顧客側の思考が苦手なスタッフは前述したような事例があっても手順として捉えるので、別の場面でも顧客視点での思考ができず、同じアドバイスを繰り返し行わなければなりません。スタッフ育成はチームリーダーの責任ですが、テクニックとしてではなく、「顧客主義」は事業を行っていくうえでの重要な考え方として捉え、自分たちの価値観を変える・高めるようにしなければ、何度も同じ教育を施す必要が出てきます。

とくにこのような傾向は、通信販売事業の特徴とも言える、KPIを軸としたルーティン作業的なPDCAに染まってしまったスタッフに起こりがちです。通販事業を1年くらい現場で経験すると、CPOやLTVの計測にも慣れるので、その計測と販促結果の評価ができるようになれば「通販事業を理解した」と思ってしまうのも仕方ありません。この点が、通販事業における難しさと課題であるように思います。

これまで何度か、「通信販売事業は、システマチックな側面と俗人的な側面のバランスが大切」と言ってきましたが、人選や登用、スタッフ育成の場面でも同様です。そして顧客志向的な、いわゆる感情的な部分とシステマチックに進める論理的な部分は矛盾をおこしやすいことも、通信販売事業のスタッフ、とくに責任者に必要とされる適正レベルが高くなってしまう要因とも言えるのではないでしょうか。

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顧客リピート対策を検討する前に、改めてスタッフの顧客主義に対する価値観と実業務への反映レベルを把握して、今後の方向性を調整・強化することをおすすめします。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

ダイレクトビジネスプロデュース室

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■上級WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
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