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通販/ダイレクト

組織、人員、定期購入制度…… 顧客リピートの強化は事業を支える土台の強化!  ~黒字化以降の戦略と課題⑦

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.42〉

顧客との良好な関係の上に成り立つリピート(LTV)

今回も前回に引き続き、顧客リピート関連の内容です。リピート型通販事業にとって顧客リピート(LTV)は、事業社と顧客との関係性の上に成り立ちます。商品情報やオファー等の衝動性を重要視せざるを得ない広告出稿=新規顧客獲得販促(CPO)と比べると、発信する情報の種類と量が多く、難易度はかなり高いと言えます。その前提となるのが、「どのように顧客とおつきあいするか」というBtoCを行ううえでの基本とも言える「考え方・顧客に対する向き合い方」ですが、顧客リピート促進を重要課題としながらもうまく展開できていない事業社は、この部分をスタッフに方向づけできていないことが大きな原因のひとつのように思います。
前回は、顧客リピートが活性化されないケースとその背景や要因について説明しました。今回もその続きとなっております。

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3 顧客リピート推進に即した組織編成と人材配置になっていない

前回記事の「2」で、顧客リピートの重要性の理解不足(言動不一致:理解しているつもりだが実態が伴っていない)の例を説明しました。それに加えて、リソース(人員、費用等)を新規顧客獲得の方にウエイトを置き、顧客リピート対策は手薄になるケースもよく見られます。その背景には、新規顧客獲得販促に多くの費用を費やさなければならないため、投下費用リスク=重要度と捉えざるを得ないこともあるかもしれません。

また、新規顧客獲得と顧客リピートの業務は、内容や人材の適性が異なるので注意が必要です。とある事例ですが、通販事業を立ち上げて新規顧客獲得がうまく進み、事業成長の土台が比較的スムーズに整いました。しかし、チームリーダーは顧客リピートも、新規顧客販促と同じやり方で進めるというケースです。新規顧客獲得は、限られた広告スペースの中で情報をコンパクトにまとめ、衝動喚起するようなクリエイティブになりがちですが、対して顧客との信頼をつくっていく顧客リピートでは、先の購入に結びつくような安心・信頼等の購入に直結しないような情報発信も必要となってきます。

むしろ直結しない情報をいかに発信するかが、顧客と関係性をつくっていく土台になるのかもしれません。いずれにしても顧客という対象者は同じですが、新規顧客獲得時とそれ以降ではコミュニケーションの質や方法がまったく異なるということを、まず認識することが大切です。

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また、顧客と事業社スタッフとの属性差があるのであれば、それも留意しなければならないポイントです。属性とは、年齢・性別・趣向等と捉えてください。スタッフの選定を検討する際には、最優先ではありませんがこれらの属性を考慮して検討することをおすすめします。ただし、顧客と類似する属性は必ずしも最優先ではありません。通信販売事業における能力や適性を優先しながら、それに「属性の一致が加わればベター」という程度でよいと思います。そして、もし自分たちがターゲットとする顧客と近い属性のスタッフを配置できなければ「自分たちは顧客のことを理解できていない」と認識し、「自分たちの感覚が顧客と大きく異なる可能性がある」ということを理解したうえで、コミュニケーションの内容を考えることが必要となってきます。

たとえば、「自分たちの感覚=顧客」という誤認識を持つことでコミュニケーションのずれが生じている組織を耳にすることがあります。顧客との同属性を重視した組織編成をしてはいますが、通販業務を展開していくスキルと適性が低いチーム。逆に、通販事業推進という面では適性が考慮されたチームでも、属性差が大きくさまざまな施策でずれが生じているケース。この2つでは、前者よりも後者の方が修正を加えて事業推進しやすいように感じます。通販事業に必要な適性を習得する方が難易度は高く、属性差はあっても顧客意識をきちんと持つことで顧客との心理や感覚のギャップを埋められるからです。黒字化する頃は数億円の年商規模になっており、それ以降のさらなる事業拡大を目指すタイミングです。同時に顧客リピートの重要性が高くなってくるので、改めて組織構造、人材配置と役割の検討を留意してください。

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4 定期購入制度の弊害とリスクを理解していない

リピート型通販事業にとっては必須とも言える定期購入制度。しかしメリットが大きい分、潜むデメリットも大きいということを認識する必要があります。定期購入制度の最大のメリットを2つあげると、顧客に継続的な購入を促せることと、事業社の負担軽減です。つまり、一度定期購入に加入してもらえれば自動的に売り上げがつくられていくように思ってしまうのです。扱う商材や戦略にもよりますが、事業立ち上げから数年は売り上げの大半を定期購入が占めることも珍しくありません。ここに大きな落とし穴があります。

冒頭で述べましたが、継続的な顧客リピートは事業社と顧客との良好な関係性の上にしか成り立ちません。定期的に自動で商品を送る仕組みに頼り切ってしまうと、顧客がじわじわと離れてしまうのは想像に難くありませんが、業務としてシステマチックに捉えすぎているとそれがなかなか実感できないようです。顧客は仕組みの利便性で継続購入するのではなく、商品や事業社に対するさまざまな「期待」によって購入を継続するのです。そして差別化戦略を展開しているのであれば、よりその傾向は強くなります。そう考えると、顧客に伝えるべき情報やコミュニケーションが不足していても自動的に商品を送り続ける定期購入制度は、ダイレクトマーケティングの一番重要な部分を阻害する大きなリスクを内包する諸刃の剣なのです。少し極端な表現かもしれませんが、定期購入制度は顧客とよい関係性を作るうえでの弊害も多く含んでいるということを意識し、メリットだけに甘んじず、その中に潜むリスクを軽減するように努めましょう。

顧客リピートにおける定期購入制度のもうひとつの注意点は、定期加入しなかった顧客の扱いをどうするかということです。事業社スタッフ、あるいは現場での顧客とのやりとりや顧客データをある程度参照したことがある方ならわかると思いますが、商品や事業社に対して期待し、継続購入意向が強い顧客でも定期購入制度を嫌う方は一定数存在します。そして、年齢が高いほどその傾向は強いようです。それはつまり、「定期購入制度に加入しなかった顧客に対してのリピート促進をどうするか?」という問題です。事業立ち上げから黒字化くらいまでの段階においては、事業社にとっては悩ましいテーマなのではないでしょうか。

手間がかかるわりに利益が生まれないので、「効率的に売り上げが重ねられていく定期購入制度への加入のみに注力した方がよいのではないか」という意見が多いのも共感する部分はあります。CPO、定期加入率、購入単価、利益率等により一概には言えませんが、効率が悪くてもきちんと定期加入しなかった顧客ともコミュニケーションをとっておいた方がよいと思います。顧客獲得コストは大きく(CPOが上昇)なってきており、せっかく獲得した顧客をいかに活性化するかは事業社にとって最重要課題だからです。

効率(採算性・高負荷)がよくない課題に対して、スタッフが知恵を絞り出すべき2つのポイントをご説明しましょう。1つめは、定期加入しなかった顧客への販促目標値をどうするか。対象者数がある程度のボリュームになるまでは、損益分岐ラインくらいの目標設定をして予算配分してもよいのではないかと考えます。2つめは、クリエイティブ構成と内容。しっかりとした内容のあるコミュニケーションを取りたいところですが、対象者数が少なく採算性が悪い状況では、いかに省コストで内容を充実させるかが重要になります。大手事業社を真似てツールを増やした結果コスト負担が大きくなったり、省コストにして少ない発信情報量になったのにコンテンツを工夫せず薄い内容になってしまったりしないように気をつけてください。

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顧客リピート対策は、本質をきちんと捉えて効果的に事業展開していくための組織編制や人材配置を行い、地道に実直に積み重ねていけば、絶大な効果をもたらしてくれます。そのためには、顧客との良好で適正なコミュニケーションが重要になるのです。コスト負担がやむを得ない新規顧客獲得を失速させないためにも、それを支えるリピートという土台の強化をもう一度見つめ直してみるのもよいのではないでしょうか。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

ダイレクトビジネスプロデュース室

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■上級WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
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