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通販事業状態の3つの変化(ステップアップ)、3つの対策~事業成長のステージに合わせた戦略構築~

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.17〉

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通販事業の展開と収支の構造

これまで、健康食品や化粧品、食品等のリピート重視型通信販売事業を想定して、立ち上げ前の準備や販促等の説明をしてきました。改めて繰り返しますと、通販事業は新規顧客獲得(投資)と顧客リピート(回収)という、役割やそれを運用するために必要なスキルがまったく異なる2つの販促のバランスを取りながら展開していきます。そうやって事業を成長させていくのですが、ここでも通販事業ならではの特徴と注意点があります。

健康食品や化粧品、食品を扱う多くの通販事業では、新規顧客獲得という販促では利益が発生せず、リピート販促によって利益を積み重ねることにより、事業の売り上げと利益を増やしていきますが、一定数のリピーターを獲得するまでは新規顧客獲得販促の赤字が多くなるため、事業全体が赤字になるという構造になっているのです。

そして、利益をもたらしてくれるリピーターは、新規顧客獲得を行わなければ増えません。事業の立ち上げ時の資金や販促方法、事業戦略によって黒字化する時期を変えることはできるものの、基本的にはリピーターによる売り上げ・利益額がある程度積み重ねられるまでは、いかに収支をコントロールするかが重要になります。

このような通販事業の特徴とも言える構造から、新規で立ち上げた通販事業の最初の達成課題は黒字化であると言ってもいいのではないでしょうか。通信販売以外のto Cによる物販事業では、黒字化とは初期投資費用を回収することというパターンが一般的だと思います。一方、通販事業の場合は初期費用の回収も必要ですが、年度あるいは月単位で黒字化するという目標設定をする場合が多いようです。

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通販事業状態の3つの変化(ステップアップ)

展開商品や市場の状況等により一概には言えませんが、健康食品や化粧品、食品等のリピート通販事業を想定して、事業成長をいくつかのステージに分けてみましょう。
ここでは、①赤字期(目的:黒字化)、②成長期(目的:売上・利益の拡大)、③衰退期の3つに区分しました。
まず、「①赤字期」は、事業立ち上げから黒字化するまでのステージです。他業種から通販事業に参入して、大きな予算をかけずに地道に立ち上げていった場合、黒字化を達成するまで数年かかることもめずらしくありませんから、立ち上げ前の緻密な予算計画と、それを管理して運用する事業推進の現場が非常に重要です。

次の「②成長期」は、黒字化した後にさらなる売上や利益を拡大していくステージです。「①赤字期」の黒字化までのステージの延長のように感じるかもしれませんが、予算の組み立て方や目標設定が①とはまったく異なります。というよりも、「異なった戦略で計画を立てなければ、効果的な事業成長ができない」と言った方が正しいかもしれません。この段階に達しても、それまでと同じような新規顧客獲得とリピートの予算バランスや目標設定をしているようでは、せっかく苦労して黒字化したことが無駄になり大きな機会損失につながりますので、留意した方がよいでしょう。

そして、通常の事業ですと成長期の後に安定期がありますが、通販事業の場合は、成長が鈍化すると比較的早く「③衰退期」に陥るケースが多いように感じます。数値モデルを参照しながら説明をすればわかりやすいのですが、簡単に言うと、リピーターの離脱により新規顧客獲得による投資とリピートによる利益のバランスが逆転して「①赤字期」の状態に戻ってしまうのです。

もちろん、一気に赤字化することはありません。しかし、いったん売り上げが減退曲線を描き始めると、立て直すのが非常に困難です。このような状況が見えてきた場合、投資(新規顧客獲得)をさらに強化するというのも対策のひとつですが、これだけだと不足でしょう。市場の状態やその中での事業社の商品やシェア等によって対策は異なるものの、一般的には、①投資(新規顧客獲得の強化)、②離脱防止・リピート促進、③事業拡張の3つの策を組み合わせて対応するケースをよく目にします。どれも状態が悪化(衰退が具体化)してからでは遅く、事前に準備しておく必要があるので、事業の状態変化(ステップアップ)が予測できる時期の数カ年計画は非常に重要となります。

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3つの対策の注意点

それでは、「①投資(新規顧客獲得の強化)」「②離脱防止・リピート促進」「③事業拡張」の3つの対策について、それぞれの注意点を説明していきましょう。まず、「①投資」は、新規顧客獲得の手段としてマス媒体を活用することが多いです(WEBは別考)。しかし、媒体効率として評価するCPOは、出稿を重ねると悪化していきます。通販事業の場合は立ち上げ時、とくに黒字化するまでは、いかにCPOを低減するかが重要課題となります。

クリエーティブ制作やABテストによるブラッシュアップ、ビークルや出稿枠の最適化等は手間もコストもかかるので、小規模で小回りがきいて媒体効率がよい媒体から拡大していくケースが、堅実な出稿拡大パターンのひとつといえるのではないでしょうか。このようなステップを経て、ある程度の事業規模になると、すべての媒体で一定レベルの出稿を行い、定常的に出稿できる媒体も選別されている状態になっています。

この段階に来ると、さまざまなクリエーティブテスト等によって実績向上策を試みるものですが、よい媒体には繰り返し出稿するようになり、いわゆる媒体疲労等で実績が低迷する要因につながることにもなります。つまり、ある程度の規模で事業を拡大して、展開する市場でシェアを確保し、出稿媒体を網羅する状態になると、新規顧客獲得のボリュームを保って、あるいは拡大しながら効率(CPO)を改善することは非常に難しくなってしまうのです。このような背景から、投資=新規顧客獲得の効率化をするということはなかなか難易度が高いと言えるのです。「①投資」という対策だけでは事業改善するのは難しい、ということを感じていただけるのではないでしょうか。

次に、「②離脱防止・リピート改善」です。健康食品や化粧品をメインアイテムとしている通販事業社は、定期購入制度をリピートの基盤にしていることが多いと思います。離脱とは顧客による定期購入制度の解約のことであり、リピート改善とは定期顧客の購入単価アップや定期制度に加入していない顧客の購入回数・購入単価のアップのことです。

実際には、定期購入制度に加入していない顧客も、最終購入日等のデータによって活性と非活性(休眠)等に区分して管理をします。実は、この「②離脱防止、リピート改善」という対策は、事業が衰退期を目の前に迎えた状態ではとくに効果が高く、「①投資」に比べて具体的な方法が多いのが特徴です。しかし、実際には顧客リピートを定期購入制度に頼りすぎてしまい、顧客活性化の販促のクオリティが十分向上できておらず、スタッフにも経験値と知恵が蓄積されていないという現場は意外に多いのです。高い効果が期待できる②と、①のみでは対策が難しいことを併せて考えることで、事業が衰退期を迎える前にしっかりと販促策のPDCAを実施して、具体的な販促展開ができるスタッフを戦略的に育てておきましょう。

そして、最後の「③事業拡張」です。拡張にもさまざまありますが、通販事業社でよく見られるのは、商品数や商品種類の増加、販売チャネルの拡張等です。商品数の増加とは、健康食品でいえば既存アイテムの価格バリエーションを増やしたり、機能性の異なるアイテムを追加することです。商品種類の増加とは、たとえば展開しているアイテムが健康食品であれば、そこに化粧品や食品等を加えること。販売チャネルの拡張は、通販で育てた商品を流通(卸や直営)による店舗販売に拡張する等です。

実は、③の商品数や商品種類の拡張は、顧客数がある程度の規模になっていれば、比較的簡単に売り上げと利益をつくることができる方法です。しかし、これらの対策を安易に行うと、それまで顧客が商品や企業に対して捉えていたブランドイメージが損なわれる可能性があります。短期的には売り上げと利益が改善されるので、マイナス面が見えにくくなりがちですが、長期的にはせっかく集めた自社の顧客離れを引き起こす要因にもなりえるので、「商品数が増えることで、メインアイテムが目立たなくなり、ブランド自体が散漫な印象にならないか」や「ブランドイメージが変化することの影響と、変化したあとの展開について」等、しっかりとした議論を行って先のビジョンをつくり、決してその場しのぎの対策にならないよう注意しましょう。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

コミュニケーションプランニングセンター

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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