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重要なのは、「受注」業務の質 ~フルフィルメントのアウトソーシング、ここがポイント

通販・ダイレクトマーケティングの基礎講座 〈vol.8〉

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「フルフィルメント」――普段あまり聞くことはないかもしれませんが、通販業界でよく使う言葉のひとつです。これは、通販業務の「受注から代金回収」までの一連のプロセスを指します。わかりやすく言うと、「お客さまが商品を注文してから、手元に届くまでに発生する業務」のことです。個別の機能を大まかに分解すると、「受注」「発送」「代金回収」となり、「受注」業務であれば、電話・はがき・FAX・WEB等での注文受け、データ入力、伝票発行等にさらに細分化されます。
リピート系の通販事業を実際に展開するときには、これに顧客分析や商品開発・改良、新規顧客獲得、リピート促進、CRM等の業務が加わります。これらをすべて含めて「フルフィルメント」とまとめることもありますが、今回の記事では一般的な「受注から代金回収」までに限定して、フルフィルメント業務の重要性やアウトソーシングする際の注意点等について詳しく説明していきたいと思います。

事業立ち上げ前に検討を。フルフィルメント業務の重要性

通販事業を立ち上げるとき、商品開発や予算計画とそれに基づく販促(新規顧客獲得、リピート)の検討はもちろんですが、業務を実行するための各役割・機能をどのような形で準備するかということも非常に重要と言えます。とくにフルフィルメント業務に関しては、事業計画と同じくらいの重要度で、事業を立ち上げる前に状況に応じた最適な形を検討しておくことが必要です。
しかし、今はフルフィルメントをまとめて引き受けてくれる業者やサービスが多くあります。また、経験のない企業が通販事業を立ち上げるには、初期費用や人材確保、運用するためのノウハウ等のハードルが高く感じるので(実際に難易度は高いでしょう)、フルフィルメントに関してあまり検討せずにアウトソーシングを決定するケースをよく耳にします。しかし、検証結果を元に細かく出稿媒体や予算を変更・修正できる販促業務に比べ、いったん事業を立ち上げた後のフルフィルメントサービス会社の変更には大きな労力がかかります。そのため、立ち上げた後に「想定外」の問題、とくにアウトソーシング先に起因する問題が見つかった場合でも、なかなか変えることを判断しにくくなるのです。そして、あえて「想定外」と記述しましたが、実際にはこの「想定外」が発生する確率が思った以上に高いから厄介なのです。

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「内製化か、アウトソーシングか」 判断のポイントは?

以前の記事でも述べた通り、今は事業形態がさまざまなので、「通販事業」とひとくくりにはできない状況です。事業の特徴に応じて、より良い選択は異なります。たとえば、少ない種類の健康食品や化粧品のオリジナルアイテムを扱うケースであれば、出荷等のフルフィルメント業務の内製化は比較的容易です。反面、流通している商品を仕入れて販売する場合はアイテム数が多くなりがちなので、内製化するには在庫管理や注文に応じた商品のピッキング等に比較的高度なノウハウが必要となります。そのため、フルフィルメント業務はアウトソーシングする方が良いかもしれません。このように、扱う商品の種類やアイテム数は、出荷業務をアウトソーシングする判断ポイントのひとつと言えます。
そして、もうひとつの重要な要素はコストです。一昔前に比べて、通販業務を請け負ってくれる協力会社は大幅に増えました。また、ITの発展により、「受注→出荷→代金回収」それぞれの機能の連結も容易になっています。このような背景もあり、通販事業を立ち上げる際にフルフィルメント業務のアウトソーシングを選択するケースが多いようです。その選択自体は間違いではなく、実際にアウトソーシングすると各業務の連結もまとめてやってもらえるので、立ち上げ時の手間が軽減されるというメリットもあります。しかし、単価ベースで試算すると、実は内製化して運用した方がコストメリットが出るケースが多いのです。ただ、内製化で事業を立ち上げる場合には、各業務の作業スペースや人員の確保・管理といった初期に投資しなければならない費用が発生するため、短期的にはアウトソーシングの方が安価で手間がかからないように見えるというわけです。

黒字化以降を見据え、単価試算と事業シミュレーションは念入りに

そのような状況から、通販事業の立ち上げ時に大規模な投資をする場合を除けば、フルフィルメント業務のアウトソーシングは妥当性が高い判断とも言えます。ただし、その場合でも、単価の試算をしっかりと行い、「事業がどれくらいの規模になれば、内製化によるメリットが出るか」というシミュレーションを事前にしておくとよいでしょう。
たとえば、出荷作業のアウトソーシングの単価が50円、内製化した場合の単価が30円とします(実際に出荷作業を内製化するとなると、出荷量によって単価は変動します)。内製化のための初期費用(採用、スペースの確保、ノウハウの習得、システム導入等)が100万円だとすると、年間出荷数が5万件以上になれば初期投資費用は回収でき、アウトソーシングから内製化することによる出荷費用の削減効果が見込めることになります。
通販事業は立ち上げから一定期間は赤字状態となるため、黒字化が最初の課題であることが多いのですが、黒字化以降の利益の投資先と投資額、回収見込み、メリット等を最初に想定し、しっかりシミュレーションしておくと、数カ年先の事業展開をより具体的に考えることができるようになるのです。

最大の注意点は、「受注」業務のアウトソーシング

ただし、とくに健康食品や化粧品のオリジナル商品を扱っている企業で、なおかつ他社の類似商品に比べて価格が割高だが独自性(付加価値)も高い商品を扱っている場合は、「受注」業務のアウトソーシングには注意が必要です。フルフィルメントの「出荷」と「代金回収」は、一定の品質を担保しつつも、どちらかと言うと効率化することで原価をいかに安くするか、いわゆるコストセンター的な側面が強いのですが、「受注」はその業務で売上(利益)をつくるプロフィットセンター的な要素が強くなるからです。冒頭で説明した、フルフィルメントには本来含まれないテレマーケティングによる新規顧客獲得やリピート促進という役割が、受注業務に付随していることがポイントとなります。
要するに、受注業務に関して、最重要視すべきは「コスト」ではなく、「商品を販売するスキルがあるかどうか=売上と利益を最大化できるか」になるのです。「商品を販売する:営業する」というスキルはとても高度で、ある程度のレベルに達するまでに時間と労力を要します。そのため、ゼロから内製化することは非常に難易度が高くなるため、事業立ち上げ時には出荷や代金回収と合わせてアウトソーシングする企業も多いと思います。しかし、販売に関する「質:スキル」の評価をしっかりせずに、単にコスト面のみの検証でアウトソーシングしてしまうと、実際に業務を稼働させてみたら売り上げの目標値に至らず、専門家に評価をしてもらった結果、実は「販売・営業に関するスキルがまったく足りていなかった」という笑い話にもならないことが現実に起こり得るのです。通販事業の経験がない方から見れば、知名度の高いテレマーケティング企業で、自社と類似する大手通販企業の業務等を請け負っているという「営業トーク」を聞かされると大きな安心感を覚えるのは当然です。しかし、実際にはその業務を行っていないチームにはノウハウが継承されていなかったり、同じ業種の業務を請け負ってはいるものの、業務の種類が異なっていたり…という、前述した「アウトソーシングした先の企業に起因する想定外」で、かつ致命傷になりかねないことが起こりうるのが「受注」のアウトソーシングなのです。

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ポイントは、受注業務を行うチームの経験とスキル

受注業務のアウトソーシング先選定に関する注意点を、もう少し具体的に説明します。 まず、前提となるチェックポイントは、自社で展開する商材の類似業務経験の有無です。類似業務の経験がない場合、営業スキルを必要とする業務のアウトソーシング先としてはかなり不足であると言えます。
また、その会社やコールセンターに業務経験がある場合でも、さらにいくつかチェックをする必要があります。一つめは、該当業務を行うチーム(スーパーバイザーやオペレーター)自体に経験があるかどうかです。たとえば、コールセンターとしては経験があっても、アウトソーシングした業務を担当するチームのメンバーにはまったく類似業務経験がなかった、ということも少なくないからです。
そして厄介なのは、通販のテレマーケティングスキルやノウハウは属人的傾向が強く、水平展開されにくいという点です。最初から一定レベルのコールセンターであることはもちろんのこと、業務開始後のチームのスキルアップやノウハウの共有が課題と言えるでしょう。アウトソーシング先の企業に教育・指導のスキルやノウハウがあるか、フォロー体制はどうか等も確認しておきたいところです。
実際の事例ですが、ある通販事業を立ち上げる企業が受注業務をアウトソーシングするに当たり、数社の比較検討を行いました。そして、「誰もが知っている通販企業の業務を請け負っている」という『営業トーク』が決め手となり、候補の中のあるコールセンターを選択しました。ところが、実際の業務開始後、想定していた数値に及ばないどころか大きく乖離したので、トーク内容や業務の運用実態を確認したところ、その企業の業務を請け負ったチームのスーパーバイザーやオペレーターのほとんどが類似業務の経験がなく素人同然だった、という信じられない結果とが判明しました。さらに、受注だけではなく、出荷から代金回収までのフルフィルメント業務一式をそのコールセンターに発注していたので、他社に移し替えることも安易に判断できず、とても苦労した、という話がありました。

まとめ

フルフィルメント業務をアウトソーシングする際には、自社の取扱い商品や業務フロー等と照らし合わせて「受注」「出荷」「代金回収」の各機能の要件を具体化し、最適な発注先を検討・選択しなければなりません。特に、顧客のリピート購入を重視し、付加価値が高い商材を扱っている場合は、販売・営業スキルが求められる「受注」業務について最大の注意が必要です。

PROFILE

戸川 孝一

株式会社電通西日本 

コミュニケーションプランニングセンター ビジネス開発部 

ビジネスディベロップメントディレクター

1999年、電通西日本に入社。 以来16年間、営業職として、オフラインを中心に、様々な業種のクライアント様の業務支援を担当。その後、内勤職への異動に伴い、ダイレクト領域とデジタル領域を担うプランナーに転身。現在に至る。 顧客データをベースとしたダイレクトクライアント様の『オンライン×オフラインを駆使した新規顧客獲得』から、『セグメントに基づく顧客育成』までワンストップで対応。 各クライアント様のレスポンス数字と向き合いながら、身を持って、数字の『楽しさ』と『怖さ』を実感する、一喜一憂の毎日。

■通販エキスパート1級

■WEB解析士

※このコラムは執筆者の個人的見解であり、株式会社電通西日本の公式見解を示すものではありません。
※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社商標または登録商標です。

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