
この記事を読んでいただく前に、あらかじめ申し上げておきます。
筆者の西上は阪神ファンです。
大阪で生まれ育ち、第一言語として関西弁を習得しました。
大学生活は神戸で、六甲おろしに吹かれながら過ごしました。
この手の人間は大概、「阪神タイガース」という球団を応援することになるのです。
そして今年、新社会人として、無縁の地「広島」に移り住むことになりました。
これから広告マンとして仕事をしていくわけですが、ターゲットとなる広島県民のことは当然よく知っておかなくてはなりません。
地域の生活スタイルに合わせたコミュニケーション提案こそ、電通西日本の強みであり、求められているものだと思いますので。
広島に来て最初に驚かされたのが、「広島東洋カープ」という球団がいかに人々から愛されているか、ということです。
飲食店では当たり前のように野球中継が放送され、みんなテレビ画面に集中しながらノールックでご飯を食べています。お土産コーナーにはカープグッズがこれでもかというほど並んでいます。
何より筆者自身、広島で数カ月過ごすうちに、カープも応援するようになってしまいました。広島対阪神の試合を複雑な心境で見るほどに。
そこで今回は、カープが多くの広島人に愛されている理由について、筆者の地元球団、阪神タイガースと比較しつつ考えてみたいと思います。
- ??
- 「しゃーないな、俺がいろいろ教えたろ」
- 西上
- 「この声は……、うちの会社随一の阪神ファン、Y田先輩!?」
- Y田さん
- 「俺も大阪生まれやから、広島人のカープ愛には驚かされてきたよ。野球のことなら任せといて!」
ではY田先輩にも教えてもらいながら、人気の秘密に迫ろうと思います。
1.応援スタイル

球場で試合を観戦してまず感じたのは、カープファンの応援の温かさです。
とにかく、みんな優しい。
選手がピンチに陥っても、球場内から「○○頑張れー!」という熱い声援と拍手が送られます。まさに、みんなで戦っているような感じがしました。
ちなみに筆者がよく行っていた甲子園だと、ひとたび選手がミスをすれば、イチローの送球よりも鋭いやじが全方向から飛んできます。愛のある(?) 叱咤激励なのでしょうが、自分がフィールドにいる選手だったら、落ち着きを保つ自信がありません。タイガースで活躍するには、鋼のメンタルが必要でしょう。とはいえ、勝った時にみんなで六甲おろし(阪神の球団歌)を歌うのは格別の喜びです。
- Y田さん
- 「カープファンはホンマに優しくて心が広い。阪神の桧山選手が、引退する年の最終打席でホームラン打ったんよ。そしたらカープファンも『おめでとう!!』って言って、一緒に六甲おろし歌ってくれたんよね」
- 西上
- 「なるほど。広島の優しくて温かい県民性が、応援にもあらわれているわけですね」
2.球場のアミューズメント性
プロ野球では、リーグ優勝したとしても、年間勝率は6割前後。つまり、全体の約4割の試合は「負け」試合になってしまうのです。
甲子園では、勝てばお祭り、負ければお通夜。試合結果で観客の満足度が天と地ほどに分かれてしまいがちなものです。
しかし!負けた日ですら楽しめるのが、カープの本拠地「マツダ スタジアム」の魅力です。
家族で楽しめるテラス席、寝そべったまま観戦できる寝ソベリア、選手を間近で見られる砂かぶり席、なんとバーベキューしながら観戦できる席まであります。眺めているだけでもかなり面白いです。(https://www.carp.co.jp/ticket/ryokin/ryokin_ichiran.html)
また、球場内にはおいしい「ご当地カープ飯」の屋台がズラリと立ち並んでいます。
つまり、勝てばお祭り、負けてもお祭りなのです!
そもそも広島には、ディズニーランドやUSJほどの大規模テーマパークはありません。
マツダ スタジアムは、広島市民の貴重なアミューズメント施設になっているのだと思います。
- Y田さん
- 「俺が入社した20年くらい前は、まだ広島市民球場の時代で、試合当日でも7回以降は無料で入れたんよ。当時から売店の名物カープうどんは大人気やったけどね!」
- 西上
- 「じゃあ、この異常な人気は比較的最近の話なのですね!」
- Y田さん
- 「最近のマツダ スタジアムの試合チケットは、ホンマに手に入らんで。シーズン前に、年間分の指定席を一気に売り出すんやけど、1日で完売してしまうからな」
- 西上
- 「それは驚きです。来週甲子園行こうよ!みたいに、気軽に行けるものではないのですね」
3.女性人気も獲得
プロ野球と聞いてイメージするのは、おじさんがビールを片手に野次を飛ばす姿ではないでしょうか。
そんな中、「カープ女子」という言葉が大流行しました。
なぜ多くの女性が野球チームを応援するようになったのでしょうか。
友人も入会していたのですが、カープにはもともと「レディースカープ」という女性限定ファンクラブがあります。女性層を積極的に取り込む姿勢がうかがえます。(http://www.carp-fan.jp/ladies/)
さらに、よく映えるチームカラーの赤。その友人も、「赤はかわいく見えるじゃろ?」としきりに話していました。おっしゃる通りです。選手の写真を撮ってインスタグラムに投稿し、部屋にポスターを飾るその友人は、まるでアイドルを応援しているかのようでした。
- Y田さん
- 「確かに、アイドルみたいにいっぱいファンが付いてる選手は多いなぁ。メジャーにいる前田、引退した黒田、最近やと堂林とか森下とかが女性にも人気やね。黒田投手は40歳のシーズンでも、メジャーの各球団から20億円くらいの巨額年俸を提示されてたんやけど、『最後は広島で』と言って、広島愛を貫いて帰ってきたんや。あの時は広島中がホンマに盛り上がったのを覚えてるな」
- 西上
- 「20億円ですか!?それを捨ててまで帰ってくるなんて。選手からも真に愛される球団というわけですね。格好良いです。男女問わず惚れてしまいますね」
4.球団の歴史

球団には、基本的に親会社がついています。
タイガースは阪神電鉄という巨大な企業に支えられていましたから、経営はある程度安定していたでしょう。当時関西には阪神の他にも、近鉄や南海、阪急の球団もありました。
そんな中で唯一、特定の親会社を持たない市民球団として広島に設立されたカープ。それを支えたのは、広島市民と地元企業の協力だったのです。
カープ創設は1949年。原爆投下からわずか4年後のことです。
不安定な経営状況の中、時に球場入口にたるを置いてカンパを募り、資金難を乗り越えたそうです。そんな、たくさんの人々の思いが詰まった球団こそが、カープなのです。
- 西上
- 「Y田さんは、それでもカープファンにはならないのですか?」
- Y田さん
- 「それはな、やっぱり阪神ファンでありたいなって思う。こっちに来てもずっと阪神戦を観戦してきたけど、カープ人気が高まるにつれて、球場の阪神ファンの割合が減っていったんや。今じゃ数百人くらい(笑)。 でもそこで使命感というか、俺が応援せんとあかんな!!と思ったのよ。広島に来たからこそ、俺も地元の大阪を好きになれた。広島の人、広島のこと大好きやもん。別の県だと、『えー、うちの地元なんもないよ~』とか言うじゃない。でも広島には誇るべきカープという球団があって、みんな地元を愛してる。それを見て、自分も大阪を改めて見直してみようと思えたんや」
- 西上
- 「なるほど。確かに『広島の人、広島のこと大好き』なのがカープ人気の根本的理由かもしれませんね。自動車も、ソースも、地元企業のものを使う人が多いですし」
人気の裏付けとして、2019年開幕戦中継の世帯視聴率は40.8%(参考:HTVプレスリリースhttps://www.htv.jp/press/other/200622.html)を記録するなど、普段から異常なほど高い視聴率を誇っています。「半沢直樹」顔負けです。毎日特番をやっているような感覚になりますね。
中継のほかにも、広島の各放送局では、カープやサンフレッチェのような地元のスポーツチームにフォーカスした番組が制作・放送されています。
たとえば、カープ知識のない広島の人気MCが、さまざまな講師の特別講義を受ける番組「カープ道」。広島ホームテレビで毎週水曜深夜0時15分から放送されています!
カープをよく知らない、興味ない人も、ぜひチェックしてみてください。
これから、電通西日本という地域密着の広告会社で仕事をするにあたり、カープと一緒に広島をよりいっそう盛り上げていけるよう頑張ります!