~いまさらながらデジタル~<vol12>
第12話:データ・ドリブンって、なんなのですか?(2)
いよいよ実戦的なデータ・ドリブン・マーケティングの稼働を試みるDMC部。いったい何を重視し、何を実現していくのか。
どうするデータ・ドリブン?
ひととおり吉祥寺 円(キチショウジ マドカ)から神泉 豊(カミイズミ ユタカ)へのデータ・ドリブン・、マーケティングの講義が終わると、いざ実践編というノリでDMC(デジタル・マーケティング・コミュニケーション)部の部長 井之頭 結(イノガシラ ムスブ)が話に加わる。

「ところで円ちゃん、アクションの実行はどう考えればいいんだ?」
「そうですねぇ・・・」
円によるデータ・ドリブン実践編の解説だ。
「先程説明したように、データ・ドリブンとは、効果測定や計測にて得られたデータを元に、次のアクションを起こすことですよね。アクションを行った結果、得られたデータから仮説を立てて、データを重視したアクションを行う。そのため、行うアクションが多ければ多いほど、ストックされるデータが多くなって、データの精度が高くなります。そして膨大なデータが蓄積される。これがDMPです」
「DMP・・・。いや、言葉はよく聞くんだけど・・・」
「データ・マネジメント・プラットフォームの頭文字ですね。このDMPにはプライベートDMPとオープンDMPがあります」
「それは自社データと外部データということなの?」
「似てますけどちょっと違います(笑)。オープンDMPは、さまざまなWEBサイトでの行動履歴やデモグラフィック情報などが蓄積されたものを指します。第三者データとしての価値を持ち、これ自体が情報として提供されることで、新規顧客や新たな見込客を得るのに役に立つものなのです」
「そうか、そうだよね。で、プライベートDMPは?」
「プライベートDMPは、企業が持つデータが蓄積されたもので、顧客との取引や会員登録、サイト内での行動履歴、コールセンターや実店舗、営業が持つ顧客リストや対応履歴といったオフラインのデータ、さらに外部データも加えて、まさに巨大な自社の情報資産として蓄積されます」
「なんかアタマが痛くなってくるくらい凄いデータの数だね」
「でもこの蓄積されたデータが既存顧客への購買を促したり、LTV(顧客生涯価値)を高めたりする効果を生み出してるんですよ」
「ホントに凄いね、そのデータが全部DMPに蓄積されるというわけか・・・」
「まあ、そうなんですが・・・」

「でも、そんなに膨大なデータを反映した施策が作れるんだろうか?データを統合するだけで大変な労力がかかるんじゃないのだろうか?」
「まさにそうですね。だからマーケティング戦略・施策ありきでデータを見極めることが必要となってくるんです。最初からデータの統合を目的として闇雲にデータを集めることは大変ですよね」
「そうだよね。社内外に散布しているデータを集めることがゴールではないはずだよね」
「ピンポーン!」

もともとマーケティング志向が高い円が楽しそうに答える。
「さすが部長!最近データ・ドリブンって言葉がもてはやされて、とにかくデータ、データと言われることが多いですが、まず何のためのデータ収集かということが大切です」
「そうだよね。ボクも若い頃に何度かデータに振り回されて、いま何のための仕事してるのか解らなくなった経験があるよ。ははは」
自虐的に井之頭が呟く。
「そうならないためにプライベートDMP構築の目的をもう一度ハッキリさせておくと、それは自社データに外部データを合わせてストックし分析することで、顧客情報を充実させ様々な局面でのマーケティング施策を実現する。ということになります」
「だんだんハッキリしてきたぞ。データ・ドリブンってデータを蓄積させることが目的じゃなくて、データに基づいた施策を実現することなんだ!」
「そうです。施策を実現しなくては意味がないんです。そのために顧客や新規ターゲットの姿をハッキリと浮かび上がらせる時によく使われる分析モデルがあります」
「分析モデル?」
「はい。挙げてみますね」
カスタマープロファイルモデル
顧客がどのような属性や行動特性を持っているのか、顧客理解を深めるためのモデルです。ペルソナ開発の際の参考モデルとしても活用できます。
カスタマーセグメンテーションモデル
カスタマープロファイルモデルと関連したモデルで、コミュニケーション施策において、異なるコミュニケーションが望ましい顧客セグメントの軸を発見します。
カスタマージャーニーモデル
顧客が、自社製品・サービスを認知してから、購買、また消費・利用に至る顧客の一連の行動を「カスタマージャーニー」として把握するためのモデルです。
カスタマー予測モデル
Aという商品を買った顧客は、BやCといった商品も購入する可能性が高い、といったレコメンデーションを行うモデルや、一定期間における利用回数が減少すると、3カ月以内に退会する可能性が高い、といったアラートを出す退会防止用予測モデルなどのことです。
カスタマーレスポンスモデル
どのような顧客にどんな提案をするとどのような反応が得られ、その次にはどんなオファーを出すか、といったコミュニケーションシナリオ開発に用いるものです。
「こうした分析モデルを活用して、具体的なコミュニケーション施策を企画・設計・実行します。ここで行うコミュニケーションシナリオの設計でコンテンツ企画・制作、ランディングページの制作、WEBサイトの構築なども行うんです」
「なるほどー!ああ、大航海に出ていた船がやっと港に帰ってきたって感じだよ」
「アーティストの出番はどこですかぁ」
神泉がとぼけたように声をあげる。
「おまえ(あなた)どこいってたの?」
呆れる井之頭と円。
キャスト紹介